STAR PRINCESS BLONDIE - Bobbie Lovesong
俺このミュージシャンにシンパシーを感じている。
音楽の多くは、複数のフレーズで構成されている。そしてそのほとんどは、フレーズが一定のリズムで鳴っていて、ほかのフレーズと同期している。
楽器奏者のリズム感は、重要なスキルとして語られる。きっちりとしたビートが刻めるかどうかは、基本的な技術として要求される。その軸があったうえでわざと前乗りだとか後ろ乗りだとか、ビートにクセを持たせて、それらの組み合わせによっていわゆるグルーヴは発生する。
グルーヴは偶発的なものとされている一方で、コントロールが必要なものであるとも考えられる。つまりどうしても軸が必要になる。
軸をいちばん正しく表現できるのは、まちがいなく機械やコンピュータだ。ぜったいにブレない。おもしろいもんで、それだけで構築された音楽はつまらないことが多い。
アンビエントやミニマルミュージックと呼ばれるジャンルでは、その概念が消えたりする。あくまで軸ありきの世界に対してのカウンターカルチャーだったりもするけど、そういう世界もある。
一度獲得してしまうと、軸という概念は二度と消えない。人間にとっての第一言語が、その人の考え方や生き方にまで影響するように、それ以降取り入れるものはあくまで2め以降の存在になる。
まだ言葉をうまく扱えない子どもたちは、この点で明らかに優れている。軸は他者との調和が前提として確実に存在する。感覚的にものごとを判断すると思われている人にだって、言語はある。それと同じように、音楽にも第一言語的な軸が存在する。
俺はこ2年間で、リズムを同期させない音楽をたくさん作ってきた。おもちゃで遊ぶように、好きなフレーズをひたすら作ってループさせる。フレーズ自体が短くても、アタマのタイミングがズレるのでものすごく複雑なものになることがある。
最初はこんなにルールないものをやっていていいんだろうかと感じることがあった。つまり俺のなかの第一の軸が、実際に鳴っているいい感じの音楽をジャッジしはじめていた。
いいものはいい。好きなものは好き。こういう考え方は他者との共存に向かないことも多い。幸い俺は一人で音楽を作ることが多いので、そんなに困りはしない。子どもたちのそれに近いことができている。
Bobbie Lovesong の音楽は、どうやら俺と同じ手法を扱っている。客観的にこういう音楽があって、そしてそれがすごくいいと思えることで、俺の軸がほぐれるような気持ちになる。
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