Februarys / Taylor Deupree & Marcus Fischer
サブスクの関連アーティストなんかから、自分好みの音楽を探ることを、レコード屋でのそれと同じくディグるというらしい。たしかにCD屋でのそれはディグ感があんまりないけど、サブスクの場合にはある。不思議なもんで。掘り下げていく気持ちがある。
今日の自分の気分にぴったりくるものをディグっていたけど、なかなかピンとくるものがなくて、困っていた。それでもなんとなく悔しくて、ディグディグし続けたところ、このアルバムに辿り着いた。
けっきょく自分の好みどおりというか、いつどんな気分の状態で聴いても、これええわ〜と思える音楽はそんなに多くない。多くないけど、確実に存在する。
こういうとき、たぶん本当は別に音楽なんて聴かなくていい日なんだと思う。しっくりこないのであれば、こないまま過ごしてしまっても別に構わない。だけどしっくりくるものが必ずあるとわかっているがゆえに、次へ次へと指を進めることになるし、サブスクとその作業の相性はいい。
辿り着いたものは、音楽であり、物音のような音楽で、まあつまりアンビエントだった。そうだ、聴いても聴かなくてもいいということを許容するアンビエントは、こういうときにほんとうにちょうどよく俺の気分を満たしてくれるし、そういう音楽を作りたいと俺自身が思ってきた理由が少しわかった気がする。
呼吸を感じるような、有機的な、だけどどこかしら無機質な音楽は、作り手の意識を越えるときがある。ゼロからイチは人が作るけど、あとは音楽が勝手に音楽をやってくれる。AIの自動学習みたいな意味ではなくて、発信された音が変調されたり、別の音と交わって色めき立つような瞬間が俺は好きで、音楽が呼吸しているように聴こえる。
おかげでサブスクのディグのおもしろさが、少し自分のなかで手法のひとつになった。これはやめられない。しかも、いよいよどこの誰かわからない、ジャケ買いでもない、音の旅、脳の旅がはじまっている。
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