新世界のあたま #358

俺の体格はとても線が細い。とくに腕が細い。腕っぷしも当然弱い。というよりかは、誰かに殴られても殴ったことがないので、腕っぷしの具合がそもそもよくわからない。そういう人生をここまで歩んできた。

それがとてもコンプレックスで、腕っぷしの強そうな相手に対してはやっぱり萎縮してしまうことが多い。

ネットで少し見ただけの情報なので、詳しいことはわかっていないけど、浅倉未来がメイウェザーに負けたらしい。俺はぜんぜん格闘技に明るくないけど、この二人の存在くらいは知っていて「ああ、やっぱりダメだったか」と自然と思えるくらいの情報はあらかじめ持ち合わせていた。

その結果を知って、腕っぷしコンプレックスなんてものは無駄だと思い知った。俺がもしある程度腕っぷしに自信があったとしても、それでも浅倉未来に喧嘩では勝てないだろう。相手はプロになる前から馬鹿みたいに喧嘩が強かったわけだし、そこからさらにプロのスキルを身につけているわけだから、腕っぷし業界で自分がある程度名の知れた人間だったとしても、どうやったって頂点に立つことはできないわけだ。

そこにさらにメイウェザーみたいな化け物がいるとなると、もう人類のほとんどは腕っぷしコンプレックスを抱えながら生きていかなければならなくなる。浅倉未来でさえそういうことになってしまう。

しかし、これからまだ長い人生を歩いていくなかで、腕っぷし業界人になんらかの形で喧嘩を売られてしまうことがないとは言えない。あの業界のこわいところは、話が通じないところだ。つまり、結局パンチ力が人類の最終権力になりえるということだ。

俺は腕っぷしではぜったいに勝てない。もし自分や自分にとって大切な何かを守るために、業界に参入したとして、たぶん武器を手に取るだろう。じゃあどうなるか。おそらく相手も武器を使うだろう。いや、腕っぷしの存在感弱っ!と、あっさり消え失せることになる。

やはり人類は核の傘の下で生きるしかないのだろうか。メイウェザーのせいで、そんなことを考えてしまったじゃないか。


今日のMUSICTRICAL

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