Established! / RP Boo
アフリカ発祥のダンスミュージック、ジューク/フットワークのミュージシャン、RP Boo、2021年の作品。ビートが軸、というか、ビートそのものが音楽。
ビートの研究者たちの、現在進行形の未来図のような音楽。ジューク/フットワークで扱われるビートの音色は、割とドラムマシンのデフォルトの音がそのままの使われていることが多い。考え方によっては、異様なストイックさを感じる。
俺が音楽を作る場合、ビートがあってその上にさまざまな音を重ねて音楽的にするという感覚がどうしてもある。俺は踊らない。俺の作るビートは、踊るためのものというより、音楽を音楽的にするためのものなのかもしれない。
そう考えると自分のビートに対する向き合い具合がなんとなくちょっと軽いように思えてくる。
アンプにギターを直接突っ込んで、エフェクターを使わずに己のサウンドを聴かせるというやり方は、昔から好みだ。極論、アコギと歌だけで作られた音楽が最強ではないかと思うことがある。そういう意味でときどきボブ・ディランのことが気になってしかたなくなる。
最近自分の歌もの曲を作るときに、ビートをどう扱うかでものすごく悩んでいる。今のところ、ビートを軸にしないということがひとつの結論になりつつある。
パソコンとDAWソフトがあれば、往年のドラムマシンの音が使えるし、音質もいい。これが困る。選択肢が多すぎるので、オリジナリティの探り方が無数に広がってしまって、ちょっとめんどくさくなってしまう。
ジューク/フットワークのミュージシャンたちのドラムマシンそのままの音を聴くと、電子音なのに、たぶんパソコンで作っているのに、そのあたりのことに対してもう考えることをやめてしまったような潔くよさを感じる。
たぶん彼らは踊ることを考えている。ビートそのものを研究する。耳で聴くのではなくて、身体で聴く。俺がこれをそのまま真似しようとすると、ぜったいに間違う。俺はぜったいに、踊ることを軸にしないほうがいい。
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