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装画『2.5次元文化論』-メイキング

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『2.5次元文化論 舞台・キャラクター・ファンダム』
著:須川 亜紀子 氏
刊:青弓社
発売日:2021/01/27
デザイン: マルプデザイン

装画を担当いたしました。

発売前に本書の「はじめに」が公開されています↓

2.5次元文化は、
アニメ・マンガ・ゲームの虚構世界を現実世界に再現して、虚構と現実のあいまいな境界を楽しむ文化実践である。コスプレ、アニメ聖地巡礼、声優/キャラコンサート、応援上映、2.5次元舞台・ミュージカル、Vチューバーなど、2.5次元文化は裾野を広げながら日々深化している。
本書ではまず、2.5次元の言葉の定義や歴史を押さえたうえで、舞台・ミュージカルに焦点を当てて、声優との関係、宝塚歌劇や特撮ものとの差異を考察する。


1:打合せ

・納期:約1ヶ月(年をまたぐ)
・2.5次元俳優 + 舞台(光)をメインに構成
 (実際に舞台化している作品のキャラをいくつか提示されました)
・観客も入れる場合、1〜2人の後ろ姿を入れるくらいで
  ←これは予算と納期の都合でナシになりました

2.5次元舞台は背景装置はなく素舞台に近いかわりに、
ライトやプロジェクションマッピングが活用されています。
(役者の演技と光の演出によって、観客の脳内で背景が補完されている)
宮崎さんのイラストだと、こちら↓がイメージに近いです。

今回描くキャラクターは
「何かの漫画・アニメ・ゲームでありそうな見た目」にしつつ、「あの作品のあのキャラだ!と思わせるほど似せてはいけない」という難しいオーダーでした。
また、一般人がコスプレしてゆるく楽しんでいるのではなくあくまで「2.5次元俳優」を表現しなければなので、
「キメ顔、きれいな立ち姿・ポーズなどがほしい」とのこと。
これを私なりにまとめると

「現実の日常生活ではまず着ないようなファンタジーっぽい格好で、武器(刀)を持っている」キャラが、
アイドルっぽいインカムをつけ、
舞台照明が踊る光の中でポーズをキメている。

またデフォルメ強めのタッチでありながら、
目元をシャープに描くなどしてイケメン感を出す。
(作例として、個人的に制作したVOCALOID「KAITO」のファンアートを提示↓)

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この頃は複数の案件を抱えていてかなり切羽詰まっていたのと、
年末年始のお休みが間に挟まるのとでなかなか大変でした。
また、「既存のジャンルを想起させつつ、似せすぎない」というバランスを見極めるのにどれくらい時間がかかるか全くわからなかったので、描くのが大変な要素はなるべく削らせてもらいました。

同じような描き込み量でも、描く内容や請け負う時期の状況で労力が全く違うので、ほんとに、イラストレーターの制作料は時価なんですよね…


2:アイディアスケッチ(ご依頼から約2週間)

ここではポージングとだいたいの雰囲気の確認をしました。
(イケメンであること・インカムをしていることがわかる程度に顔を大きく描きつつ、刀を持った躍動感のあるかっこいいポーズ…を模索するのが地味に大変でした)
仮案でおいたキャラクターは、この時点では、先方に参考として紹介された既存のキャラに似すぎていたので、ここから差別化していきます。

3:フィードバック(約1日)

(1)キャラクターの外見を変える
 ・洋装を白色に
 ・洋装の装飾はなるべく削除して、シンプルに
 ・髪を逆立てたり、ピンクやオレンジ色に変える
 (アニメのキャラっぽく振ってしまう?)
  …など

(2)
・サイリウムを3色くらいに増やす
 (単色だと特定の「推し」を表現してしまう)
・役者が観客に背を向けているように見えるので、
 役者の手前にもサイリウムを置く

「サイリウムが単色だと特定の推し色のように見える」という発想はなかったのでなるほどな〜!と思いました。
(アイディアスケッチではもっと色数少なくまとめていました)

またこの時点でデザイナーさんがデザインラフを複数案作ってくださったので、紙面の完成図がイメージできて制作しやすくなりました!

4:推敲ラフ(約2日)

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衣装など諸々の差分を作りました。
私自身は2.5次元に詳しくなく「この部分をこう変えたらキャラAとは離れたがキャラBに似てしまった」…みたいなことになっても認識できないので、そこは先方にお任せしています。

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先方に選んでいただいたものへ、
さらに上下左右の足りない部分を描き足し(当初は表紙だけの予定が背表紙までイラストがまたがることになりました)、本制作に進みます。


5:完成(ご依頼から約30日)

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クリンナップして完成。

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ラフの時点でタイトルなどデザイン案を複数作ってくださっていたのですが、完成品は私が一番「かっこいい!」と思ったものがベースだったのでなんだか嬉しかったです。
写真だとうまく伝わりませんが、実物は独特のテクスチャと光沢でキラキラしているのでおもしろいです。
背表紙と袖にもキャラクターが。

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発売日は1月27日!
どうぞよろしくお願いいたします。

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宮崎ひかり
サポートしていただいた売り上げはイラストレーターとしての活動資金や、ちょっとおいしいごはんを食べたり映画を見たり、何かしら創作活動の糧とさせていただきます。いつも本当にありがとうございます!!