少年少女、前を向け。
白いイヤホンを耳にあて、うだるような暑さのビル街を歩く。
昔は有線のイヤホンだったのに、いつしか無線のイヤホンをしている人ばかりになった。
分厚かったiPhoneはすっかり薄くなり、カメラのレンズも増えた。
そう、僕らはもう、少年少女ではなくなってしまった。
あの日、何度も繰り返された夏が終わり、僕らはこうして有限の時間を生きることとなった。
マリーはこの世界が終わるのが寂しいといった。
だけど、また会えるよね、と寂しそうに笑った。
彼女は、この終わらない輪廻を断ち切ったのだ。
きっとまだアザミはどこかでカゲロウデイズの中にいる。
あの黒い蛇を終わらせた僕らは、もうあそこにいることはない。
そんなことを考えながら歩いていると、ふいにどんっ、と肩に衝撃が走る。
しまった。姿はもう、見えてしまっているんだっけ。
「すみません…」
慣れない発声に掠れた言葉が、宙に浮かんだ。
あの嘘みたいな臨死体験を経て、僕らが得た能力と世界は、あの日にして終わった。
あっけなかった。幽霊同然だっら僕らは、あの世界が終わると同時に消えると思ったが、なんとかこの世界に身をとどめている。
勝手に化けるあいつも、心の中を見透かしてくるあいつも。
都合よく生き残ったやつらもいるが、もうあんなことがあった後なら、何も驚くことはなかった。
みんな、結局この世界に戻ってきた。
姉ちゃんも、あいつの力で戻ってきた。
僕らが出会うことは、必然だったのだろうか。
もう赤くなることがない眼に少し寂しい気持ちもあるが、今日もまた、皆の待つアジトのドアをノックした。
解釈は違うかもしれませんが、夏と言えばこの楽曲・プロジェクトが身体に染み付いています。
あの日少年少女だったわたしたちは、すっかり大人になってしまいましたが、あの夏の日を、赤くならない眼を隠すためにフードをかぶり、赤いマフラーをした日々を忘れません。
カゲロウプロジェクトに、敬愛を込めて。
8/14-8/15、赤くならない眼を閉じて。
※アイキャッチ画像に素敵なお写真をお借りしました。ありがとうございます。