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【韓国論文】まぎらわしい連語を作る나다と들다の覚え方


1.日本語に直訳できない韓国語表現をひとつひとつ丸覚えするのは大変

直訳で意味が分かりにくいもののひとつに、連語表現があります。
これらは、言語を使う人たちの基本的な考え方やものの見方など文化的要素も含まれているため、ひとつひとつその都度丸覚えする人も多いでしょう。
より分かりやすく忘れにくい覚え方がないかどうか試行錯誤した研究も多く存在します。

今回は、対義関係にある2つの語彙を中心に韓国語学習者が紛らわしがる連語表現をわかりやすく覚える方法を図式で説明してみようとした論文を共有します。

共有する論文:イ・ヒョジン、イム・ヘウォン「映像図式を活用した나다/들다の意味教育方案」


2.図式で表現すればいちいち覚えなくてもよくなるかも?

韓国語の初級段階で覚えてからずっと日常的に使う単語に나다(出る)と들다(入る)があります。
論文では、この反対の意味を持つ2つの単語を中心に図を使って教えることを提案しています。
나다と들다を図を用いて教えることの効果について次のように論文では挙げられています。

①나다と들다のような多義語教育に映像図式を活用すれば、学習者が語彙の意味に対した理解力を高めるところに役立つ。
②映像図式を活用すれば、나다と들다に先行する名詞との結合関係を理解して、学習者の連語表現リストを拡張するところに役に立つ。
③映像図式を活用した語彙教育は学習者の語彙学習に対した関心を高めて、意味の推論と連想能力を伸ばすところに役立つ。

pp.309-310

論文では、各単語の基本的な意味を次のように示し、大小の2つの円を使って説明しています。

나다 中から外に移動する (out)
들다 外から中に移動する (in)

p.315

上記をもとに、意味が拡張段階ごとに3つに分けて6種類の図式を作成しました。
小さい円が大きい円の中に入ったり出たりする図式を活用すれば、나다と들다は対義語の関係にあり、抽象的な概念を表現する連語も理解しやすくなります。

例えば、似ているように見える맛이 나다と맛이 들다の違いも、小さい円が大きい円の外から中に移動する図式と反対に、小さい円が大きい円の中から外に移動する図式で説明可能です。
맛이 나다は料理の過程を通じて맛(味)が現れ出ることで、맛이 들다は時間などの外部要因によって맛が与えられることだと考えられます。

他にも、意味が似ているために学習者が混乱しやすい생각이 나다と생각이 들다も同様に整理ができます。
생각이 나다は、小さい円で表現した생각(考え、思い)が大きい円で表現した話者の中にある精神世界から外へ移動する図式で表現できます。
そのため、생각이 나다の생각は記憶や思い出のような過去の経験と関連があります。
対して、생각이 들다は생각이 나다と反対方向の図式で表現可能であり、これまで考えたことなかったけれども外部からのアプローチによって入ってきたことだといえます。

このような説明とともに実際の授業では、図式をイラスト化させたものを使って4択の中から選ぶ練習問題を活用します。
そして、どうしてそのような表現になるのかをクラスメイト同士で話し合いながら韓国語の連語表現について理解を深めていきます。

論文では最後に、このような教育方法は多義語の語彙と表現を別々で暗記しないといけない学習者の負担を減らして、理解と習得能力を育て、忘れにくくするのに役立つとしています。
また、事件や行為、現象を解釈する韓国語の考え方を理解して韓国語の言語文化教育機能も一緒に行われるとしています。


3.連語を分解して説明して大丈夫?

図像を使うことによって나다と들다の対義関係説明するのはわかりやすいと思います。
しかし、생각이 나다のような、2つ以上の単語のつながりをひとつの単語として見る連語を分解して教えていいのか疑問が残ります。
たしかに、図式を使えば韓国語的な考え方を視覚的に理解しやすいような気がします。
だからこそ、学習者目線で見るとなぜそうなるのかという疑問ができるでしょう。

例えば、日本語を基準に考えると생각이 나다は思い出すとも訳せます。
似ているように見えますが、日本語は出す(내다)と他動詞を使うのに対して、나다(出る)と自動詞を使います。
他にも、몸살이 나다も図式で説明するのは簡単ですが、몸살に当たる日本語を探すのは簡単じゃありません。
だから몸살이 나다の説明として、몸살が大きな円の中から外に出る図を見せられても学習者は困るでしょう。
むしろ、複雑にして教えているように見えます。

やはり、連語は地道にたくさんの例文を通して意味と使い方を覚えるような古典的なやり方が、より分かりやすく確実なやり方だと思います。

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論文

イ・ヒョジン、イム・ヘウォン(2020)「映像図式を活用した나다/들다の意味教育方案」『外国語としての韓国語教育』59集、延世大学言語研究教育院韓国語学堂、pp. 307-335
이효정, 임혜원(2020)「영상도식을 활용한 ‘나다/들다’의 의미 교육 방안」『외국어로서의 한국어교육』vol.59, 연세대학교 언어연구교육원 한국어학당, pp. 307-335


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