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【読書レポ 論文編】キャラクターが持つ「ストーリー」と見た目の「かわいさ」どっちが重要?

1.成長すれば好きなキャラクターも変わる

あなたは、子どもの頃にのめり込んでいたキャラクターはありましたか?

たとえば、幼稚園や保育園のクラスにひとりは、アンパンマン博士と呼ばれるほど『アンパンマン』の登場キャラクターに詳しい子がいますよね。しかしそんな子も小学生になる頃には、アンパンマンへの熱も冷め、違うものに興味を持ちはじめます。

今回は、子どもの発達段階においてキャラクターグッズの消費行動が変化することを論じた論文を共有します。

共有する論文:『子どもとキャラクター・グッズ』

2.アンパンマンから脱ストーリーへ

新井は、キャラクターを以下のように定義します。

その絵柄自体が固有の存在として認知され、また、その絵柄自体が価値を持つものである。p.424

そしてキャラクターの機能は、以下の4つであると分析します。

①親近感
②差別化のシンボル
③自己(理想)表現
④コミュニケーション  pp.424-425

子どもの発達とキャラクターのかかわりを観察すると、①「ストーリー消費」と②「シンボル消費」の2つのキャラクターグッズの消費パターンが浮かび上がりました。

①「ストーリー消費」は、キャラクターの世界を自分の生活の中に入れたいという願望による消費のことを呼びます。②「シンボル消費」は、キャラクターを記号化したものとして消費することを呼びます。この消費パターンは、消費者が成長するにつれて①「ストーリー消費」から②「シンボル消費」へと移行します。この両者の傾向の違いを新井は以下のように記述します。

このストーリー消費は、簡単なストーリーを理解できるようになった幼児期から小学校低学年くらいの間に顕著にみられる。好きなアニメや物語のキャラクターグッズを持ちたいというものであり、好きなストーリーがそのままグッズに結びつく。p.427
シンボル消費とは、キャラクターをブランドのロゴやマークのように、記号化したものとして消費する。
わかりやすい例では、大人の女性がキティのグッズを持つことが挙げられるだろう。
(中略)
つまり、記号的にそのキャラクターを消費しようとしても、そのキャラクターの世界観から切り離されることはない。キャラクターの図像の魅力が大きく作用する。図像での「かわいさ」「ユニークさ」等によって選択される。p.427

キャラクターグッズの消費パターンは、ジェンダー差もみられます。男児は、仲間内の男児らを巻き込んで流行が起こるため「大衆的」市場を形成します。カードゲーム「遊戯王」など社会現象となって現れることもあります。

対して女児は、このような社会現象を巻き起こすほどの特定のキャラクターグッズに集中する傾向はみられません。女児は、自己編集的にかわいいシールを集めたりかわいいぬいぐるみと遊んだりと、それぞれの感覚的消費をする傾向にあります。そのため男児のように大きなブームになることは少なく、「分衆的」市場を形成します。

3.いくつになっても好きなものは好き

今回の論文で、年齢や性別によって好むキャラクターが異なることが分かりました。また年齢が上がるにつれて、消費行動が変化するためそれに合うキャラクターを選択することも分かりました。

今回は、幼児期から大人の女性まで例が幅広く登場しました。しかし現在では、子どもの頃に消費した同じキャラクターを長く愛好する人々の存在も語られます。キティの場合、親子ともに世代を超えて愛好することもできます。特定のキャラクターに注目した場合、幼児期の頃と大人になった頃と消費パターンに違いが表れるのかについて気になります。

たとえば、わたしの記憶では、「しょくぱんまん」のぬいぐるみキーホルダーを鞄に付けている女子高校生を何人か見たことがあります。たぶん彼女たちは、幼児期から継続して「しょくぱんまん」を好きだったというよりは、一度成長とともに『アンパンマン』から離れて、再びキャラクターグッズを消費するようになったように見えます。この場合のキャラクターのかかわりの違いは何でしょうか。

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参考・参照文献:新井範子「子どもとキャラクター・グッズ」『繊維製品消費科学』42巻7号、日本繊維製品消費科学会、2001年、pp.423-429


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