[韓国論文]教材に含まれた文化


1.学習者が身につけるべき文化知識について

韓国語教育研究における教材分析では、たびたび韓国文化をどのように扱うか?という問題について取り上げています。
その中でも、文化項目として取り扱うわけではないけれども、韓国語話者として、あるいは韓国居住外国人として望ましい振る舞いなども教材の登場人物を通じて示されていることも少なくなく、この部分に対した批判にも注目を寄せています。

今回は、一般的な韓国語学習者と結婚移民者などの特別な目的をもった学習者、それぞれを対象にした教材を分析した論文を見ていきます。

共有する論文: ファン・インギョ「外国人のための韓国語教材と文化」


2.学習者の特性に合わせて韓国文化を教えるには?

この論文では、文化は外国語学習教材にどのように現れるべきで、実際にどのように現れているのかを調べる必要があるとしています。
韓国語学習者の効果的な韓国語上達と文化理解のために、教材は、一般的な説明中心より学習者自身で学習中の文化を自分の文化と比較して評価させる方が効果的といえます。
そのため、一般的に教材に文化を収録する時に必要なことは次の通りです。

  1. 様々な目標文化との比較や歴史的な次元での考慮

  2. 価値付与的な言及と興味に対する考慮

  3. 失業、貧困、人種問題などの社会問題への考慮

しかしながら、上記のことを実践するのが簡単じゃないと言う問題もあります。
論文では、いくつかの韓国語教材に載っている文化に関連した要因を集中的に調べて文化が入った望ましいやり方を探してみることを目的としています。
この研究は韓国語教材を分析する際に、2つの観点を導入しました。
1つ目が「独立領域としての文化」です。
これは、教材から別途で分離された項目として扱う文化のことを指します。
2つ目は「教材に含まれた文化」で、潜在的教育課程とも呼ばれる、教材に込められた社会的文化的価値のことを指します。

1つ目の独立領域としての文化については、示し方において、比較的な学習者の経験と視覚形成を考慮する試みを重点的に調べています。
韓国語の授業では文化項目を余り部分として扱わない場合があると、いう問題があり、論文ではこの点を調べるために、ある文化項目を選定してどうやって学習者に提示しているかについても調べています。
2つ目の教材に含まれた文化については、別途で学ぶ文化項目でなく、教材で示された対話や談話構成、演習やレイアウト、指示文や挿絵など通して読まれるため、これらに注目して分析しました。

分析教材は、一般目的の韓国語教材と特定学習者対象の教材の2種類に分けて、行われました。
特定学習者は、海外に住んでいる韓国人や結婚移住女性などの学習者を指します。

分析の結果、一般目的の韓国語教材では、学習者の個人的な経験談や登場人物同士の対話で文化を紹介しながら文化の習得を狙っているが、登場人物の視覚や性格があまり現れていないのが問題視されました。
一方、特定学習者対象の教材では、登場人物たちが没個性的で非現実的な性格や振る舞いをし、他の教材と差別されていない点が問題として挙げられました。

論文の筆者は、今回の研究で得られた結果を簡単で少ないものだと評価しました。
最後に、引き続き同様の教材検討や実際の教育現場で役に立つ様々な方案の模索の必要性を強調しました。


3.韓国文化の伝い手になる教材のキャラクター

言葉の意味がまだはっきりと理解できない学習者は、話の流れや人物の表情など言語外の部分を観察しながら分からない部分を補完しようとします。
そのため可能な限り、地域や世代で変わらない普遍的な話題や、あるある(と思われている)なキャラクターやイメージが活用されます。
教材としてはこの部分が、学んでいる韓国語の理解の手助けになるように気を使って製作するのが理想的ですが、論文では特に特定学習者向けの教材において物足りないという分析結果がでました。
この論文は、2007年に発表されたものでやや古いので、もしかしたら最近の教材開発研究では更新されているのかが気になるところです。
特にスピーキングの練習では、学習者が登場人物になりきりながら自然な韓国語表現を習うので、ロールモデルになるキャラクターについてどのように設計するのがより良いかについて、もっと議論する必要があると思います。

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論文:

ファン・インギョ(2007)「外国人のための韓国語教材と文化」『二重言語学』35号、二重言語学会、pp.409-438.
황인교(2007)「 외국인을 위한 한국어 교재와 문화」『이중언어학』35호、二重言語學會、pp.409-438.

今回の論文で論じられた「教材に含まれた文化」については、次の記事でも扱っています↓

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