『創業に関わるデザインの今 ~寄り添うデザインサポートの本音~』
起業支援に取り組む中小企業診断士の集まり『スタラボ』
今月の座談会は、デザイナーの小林由美子さまに登壇いただきました。
テーマは『創業に関わるデザインの今~寄り添うデザインサポートの本音~』
『デザインとは「ものを作る」だけのことではありません。
デザインとは「事業をゼロから創る」ことです』
小林さんの大切にしているメッセージが強く響きます。
デザイン支援を「ビジネスが固まった後に、デザインを製作するもの」というイメージを持っていると、小林さんのフィールドの広さに驚く人も多いはずです。
小林さんとは、事前にテーマのご相談をしたときに
「デザイン制作」の支援だけでなく、「創業者に寄り添う相談支援」を含めてお伝えしたい
と、お聞きしていたので、座談会ではその想い(デザイン支援の本音)が節々にあふれていました。
相談者の想いや気持ちを大切にする小林さん。
「寄り添う支援」の実際の経験談からも、多くの気づきをいただきました。
小林由美子 様
東京デザイン星組 デザインコーチ
外資系家電メーカーデザイン室、ゲームソフト会社広報課、広告代理店、国内メーカー販促課デザイン室を経てフリーランスとなる。デザイン相談、各種制作、スキルアップ講座や創業塾にて登壇。
以下、小林さんの座談会の概要です。
「本当の自分」がやりたいこと
「あなたが一日中ワクワクするものは何ですか」
創業の相談を受けたとき、相談者が本当にそのビジネスをやりたいとは限らない。相談者本人も実際にわかってないことも多い。
そんなときには、建前を取っ払って、心の奥底に潜んでいる「本当の自分」がやりたいことに気づいてもらうことが大事。
子供のときのミュージシャンになりたかった話を聞いたり、ふとした雑談のなかで見つけたり・・と、相談者が本音で語るまで寄り添って話を聞くようにしている。
この本音が聞けてから、ようやくビジネスやデザインの相談がスタートできる。
デザイン相談
デザイン相談では、大きく3つのステップで支援している。
①ヒアリング
相談者のヒアリングに一番、時間をかける。
上から目線の「教えてあげる」という姿勢では、相手はなかなか本音を話してくれない。雑談をしているようで、実は相手の本当の気持ちを聞いていることも多い。
「心の奥、本当の気持ち」を聞くことが大切。この気持ちが聞けると、相談者の「自ら実行して、学ぶ気持ち」が高まり、モチベーションアップにつながる。
②スケジュール確認
次のステップでは、相談者の想いをビジネスのカタチにしていく。
ビジネスの基本を学び、自分にどんな準備が必要か、リアルな状況を知ることが大事。経営者としての最低限の知識を持てるようにする。
いつまでに何をやるかスケジュールを決めることで、ビジネスの内容が明確になっていく。
③ツール作成
本気でやりたいビジネスが固まった後に、必要なパンフレットや企業紹介、名刺など、ビジネスで必要なツールをデザインする。
時間の使い方で言えば、創業のデザイン支援のうち、制作にかけるのは10%ぐらい。残りの90%は対話のなかで相談者の想いをカタチにしていく。
ツールを作ることで、営業活動など、すぐに動き出せる状況をつくりだせる。
創業相談のスタイル
自身の創業支援は「相談」「セミナー」「製作」そして「交流会」。
例えば、創業セミナーでは「みなさんにとって肩書とは何ですか?」と問いかける。本当にその肩書で、社会に理解されるのかを意識することが大事。
「中小企業診断士」と言われても何をしてくれる人かわからない。自分の強みや特徴を知ってもらえるようなメッセージを伝えること。肩書ひとつでも、相手に伝わるように工夫することが大切。
そして、一人で考えることの多い創業者にとって、多くの人とつながりをつくる「交流会」も大切な支援の一つ。このTokyo-Design 星組のアトリエスタジオも、そんな創業者が交流する空間になっている。
最後に
小林さんは講演中も終始、笑顔で和やか。創業者の相談にもあたたかい雰囲気で接していることが感じられます。
でも、相談者にとって、心の奥底まで潜って、自身の価値観に気づくのはけっこう大変。自分もそうですが、どこかで他人の評価を気にしたり、カッコつけようとしちゃうもの。中途半端な気持ちであれば、小林さんに「あなたが本当にやりたいことですか」と問われてしまう(笑)
そこから、ビジネスの内容を固める山登り。一歩ずつ想いをカタチに変えていく。深く潜って、自分の本当の気持ちに気づくことで、高い山にも登れるのかもしれません。
そんな大変なプロセスも、小林さんの寄り添うサポートがあるからこそ安心して、深いところへ、高いところへ行ける気がします。
相談者の「ワクワクする気持ち」を尊重する小林さん。
本日はありがとうございました!