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ソーシャルビジネスで『世の中をもう少しやさしくしたい』

今年、最後のスタラボ座談会は「ソーシャルビジネス支援の取組み」をテーマに本田さんに話していただきました。

まずは相談者の話に『共感』して『理解』すること。そこから支援は始まります
そんな本田さんの想いが伝わる言葉が印象的でした。

ソーシャルビジネス支援では、事業化へのアドバイスよりも、まずは解決しようとする社会課題そのものを受け止め、理解することの大切さを感じます。

■プロフィール
本田さん(中小企業診断士)
本業では、NPO支援、ソーシャルビジネス支援、協働推進等の業務に従事。現在は地域課題を解決するための創業エコシステム作りに取り組んでいる。2017年度中小企業診断士試験合格後、2018年より診断士を主とした社会起業家支援グループを発起。

以下は、本田さんの講義の主な概要です。

1.ソーシャルビジネスとは

ソーシャルビジネスとは、さまざまな社会的課題に対して、市場としてとらえ、その解決を目指す事業。次の3つの要件がある。
・「社会性」
・「事業性」
・「革新性」

どんなに社会的な意義を掲げた事業であっても、事業として継続的な活動ができなければ、ソーシャルビジネスにはなりえない。
3つ目の「革新性」は、これまでに世の中に認知されていない課題に対して「新しい解決の仕組みをつくる」ということ。ソーシャルビジネスで扱うテーマは、いまの社会で起きている新しい課題も多く、そもそもビジネスモデルが確立されていない。身近なビジネスで起業するときは、同業他社のビジネスを参考にできるが、ソーシャルビジネスは新しいビジネスモデルをつくりだす必要がある。

(参考)ソーシャルビジネスの定義

ソーシャルビジネスの代表的な事例として、次の3つが紹介されました。

①認定NPO法人フローレンス

②グラミン銀行

③株式会社ボーダレス・ジャパン

2.なぜソーシャルビジネスが求められるのか

参加者に質問。「なぜ今、ソーシャルビジネスが求められているのか?」
チャットを使って、参加者からさまざまな回答がありました。

答えは一つに限らないが、その答えの一つは「資本主義の限界」。
社会の抱える課題が多種多様になり、行政だけでは解決できなくなっている。一昔前であれば、収益が上がる分野であれば、営利企業が参入し、収益を上げにくい分野があれば、行政が担っていた。
しかし、現在の社会では、さまざまな社会課題に対して、行政のもつ予算や人員ではリソースが不足している状況。そんな行政や営利企業では対応できない領域に、ソーシャルビジネスが広がっている。

また、社会や人びとの成熟化も要因の一つ。マズローの欲求段階説でいうところの「自己実現」を目指す人が増え、社会に役立ちたいと思う人たちが、ソーシャルビジネスを促進させている。

3.ソーシャルビジネスの特徴

ソーシャルビジネスをPPMで分析。
縦軸に市場成長率(認知された困っている人の数)を取り、横軸に収益率を取って4象限に分けて考えてみる。

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まず、収益率が高い領域(花形・金のなる木)は、営利企業が担えるので、営利企業の事業活動で課題が解決されていく。
次に、収益率が低く、困っている人の数が多い領域(問題児)は、同じような課題を抱える人も多いので、行政が取り組んでいる。
そして、収益率が低く、困っている人の数が少ない領域(負け犬)。社会的な課題があっても、ボリュームが小さいところ。ここが「ソーシャルビジネス」の領域になっている。

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この「負け犬」から脱却するアプローチとして2つ。1つは社会運動や啓蒙活動などをして、解決する価値がある社会問題として大きく取り上げてもらい、市場を広げるとともに「行政」の関与も増加させていくこと。(アドボカシー)
もう一つは、ビジネスモデルを工夫するなどして、収益性を上げて事業としての継続性を目指すこと。(収益性UP)
ソーシャルビジネスに携わる際には「負け犬」の領域から、どのベクトルに向けた行動をとるべきかを考えることが大切になる。

4.ソーシャルビジネス支援のポイント

ソーシャルビジネス支援に携わるうえでの3つのポイント。

①共感と、取り組む価値の理解
社会課題に取り組む人の話をきちんと聞くこと。寄り添うこと。世の中に認知されていない新しい分野も多いので、まずは取り組むことの価値を認め、理解する。

②課題起点のブラッシュアップ
事業化がテーマになると、往々にして「どう稼ぐか」の視点が強くなるが、社会課題の解決が目的であることを強く意識する。また、リーンスタートアップ方式で、課題や解決策を探索していくスタイルが効果的。

③資源につなぎ、共感の輪を広げる
自分たちだけで解決しようとするのではなく、他社との関係性をつくり、広げていくこと。「共感」による関係者の巻き込みが大切。

また、本田さんは「NPOを含めたソーシャルビジネス支援は、中小企業診断士にとってブルーオーシャンの領域。そんなブルーオーシャンがレッドオーシャンになったらいい」と同業の診断士の参加を期待しています。

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最後に

まとめとして『ソーシャルビジネス支援をすることで、間接的にも社会の役に立つことができる』と話されていました。自分がプレイヤーにならなくても「支援を通じて、社会がよくなることを手伝える」という強いメッセージを感じました。
本田さんの「ソーシャルビジネスで世の中をもう少しやさしくしたい」という想いは、1時間という限られた座談会であっても、参加者に深く響いたのではと思っています。

社会が多様化し、社会課題がますます増えていく時代。
仮に最初は「負け犬」の領域にあったとしても、その課題解決の使命に共感し、事業化を支援する意義が大きいことに改めて気づかさていただきました。

本田様。本日はありがとうございました。