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起業相談って何をしてくれるの?
今のコロナ禍では「起業相談に出かける」のは難しいですが、落ち着いたら「ちょっと相談してみませんか」
その前に「中小企業診断士が何してくれるの?」と思うその気持ち、わかります。
相談したからといって「もうかる商売を教えてくれる」わけでもないし「何かを代行してくれる」わけでもない。
「こんな相談したら、説教されるんじゃないか・・」といった不安も。
でも、相談するときっと、いいこともありますよ。
起業の準備を始めたころは
「どんなビジネスなら、うまくいくんだろう」
「このプランで起業できるんだろうか」
とか、漠然とした不安や悩みも多い。
そんな状況のときは、ふわふわしたアイデアや自分の想いを「カタチ」に変えていくプロセスが大事かも。
相談に乗る診断士にも、それぞれのスタイルがあると思いますが、私は相談後に「自分が今やるべきことがわかりました!」と言ってもらえると最高にうれしくなります。
当たり前なんですが、事業をするのは相談者であって診断士ではない。相談する人が「納得して、行動できる」サポートがしたいと思っています。
実際、相談を受けるときは、アドバイスの時間よりも、質問をして話を聞かせてもらう時間の方が長い。質問をしながら、相談者と事業のストーリーを一緒に作っていくことを大事にしています。
今回は、はじめての起業相談で、こちらから聞かせてもらう3つの質問をまとめました。
質問①
「そりゃ、誰でも来てくれればいいよ」
と返されることもありますが「誰もがお客さん」というのは、なかなか難しい。
そんなときは、自分のお店に来てもらいたい「お客さん」をイメージしてもらいます。「この商品・サービスを喜んでくれる人ってどんな人か」を想像してみる。
「〇〇地域の30代女性」というよりも「日々の仕事で疲れて、週末ぐらい贅沢したランチが食べたい独身女性」といった感じで、具体化するとお客さんの解像度が上がってきます。
このとき、想定しているお客さんの「困りごとや悩みごと」も考えておきたい。
例えば、想定するお客さんは「平日は時間をかけて、落ち着いた食事ができない」といったリアルな困りごとがわかっているといいですね。
もし、売りたい値段も決まっていれば、想定したお客さんに近い人に「その値段で買いますか?」と聞いてみるのも一つ。その時のリアクションは、参考になるはずです。
あくまで自分が聞いてきた範囲ですが、うまく商売をされている方は「ウチのお客さん」について饒舌に語る人が多い気がします。
「お客さんを想像する力」は、大事にしたいですね。
質問②
世の中には同じような商品・サービスも多い。
人が住む「半径10キロ圏内には、パン屋はありません」となれば、お客さんは来るんでしょうが、そんなビジネスの「空白地帯」というのは、なかなか見つからないものです。
多くの場合は、ライバル店との比較になる。
質問は「お客さんが、あなたから買う理由は?」と言い換えてもいいかもしれません。その買う理由が、商品・サービスのウリ(特徴)になりますね。
この「ウリ」は、意外に相談者本人が気づいていないことも多い。
「ウリなんてないよ」と言われたりするんですが、よくよく聞かせてもらうと「それってウリじゃないですか」というのも出てきます。
例えば、
・材料の「素材」や「産地」へのこだわり
・知識が豊富でアフターサービスが手厚い
・スキルが高くオーダーメイドの対応が可能
とか。
この「ウリ」になるものは、相談者本人の経験やスキル、こだわりに紐づいていることも多い。質問をしながら、相談者自身の持つ強みやビジネスモデルの特徴などから、本人が気づいていない「ウリ」を一緒に探していきます。
この商品・サービスの「ウリ」は、ビジネスの柱になるものなので、時間をかけてでも「これです!」と相談者が納得して、自分で説明できるものをつくりたいですね。
質問③
この質問は、ストレートに聞いても答えにくいことが多い。
なので、相談相手や状況に合わせて言い方を変えたりしますが、教えてもらいたいのは「ビジネスの価値観」です。
「外注せずに手づくりにこだわりたい」
「できるだけ多くの人にサービスを使ってもらいたい」
「開業する地域の人々との関係を大切にしたい」
「大きなリスクは取らずに、自分のお店を持ちたい」
など。
例えば、カフェを起業する場合でも、スタバのように「多くの人に商品を提供したい」のか、「自分自身がつくる料理を食べてもらうこと」にこだわりがあるのか。
もちろん「ビジネスの価値観」に正解はなく、人それぞれ。
ある意味、この価値観は相談者の「意思決定の軸」になるものと言えるかもしれません。
この後、実際にビジネスプランを検討していくと、多くの意思決定の場面が出てきます。
・店舗の立地は何を優先するか
・開業資金500万円をどう使うか
・仕入先や外注先はどこまでこだわるか
など、何かを決めるときに「自分が何を大切にしてビジネスをしたいのか」が明確になっていると優先順位がつけやすくなります。
相談を受ける側も、本人の価値観を知らないと、相手に合ったアドバイスがしにくい。
この「ビジネスの価値観」は、わざわざ質問をしなくても相談を聞いていく中で、自然に話をされることもあります。想いの強い人は、明示的に聞かなくても話の節々にあふれ出てきますね。
一方で、相談者自身が、自分の価値観に曖昧だったり、気づいていないこともありますので、そのときは、話を聞きながら「大切にしている想いや価値観」を本人が言語化できるようサポートします。
最後に
実際には3つの質問以外にも、いろいろな話をしています。でも、私の場合、最初の相談ではこの3つを意識して話を聞かせてもらっています。
特に3つ目の「ビジネスの価値観」は、相談者と本音が話せる信頼関係が築けていないと聞けないことも多い。ときに「本人の生き方」に触れるぐらい、深い話になることもあります。
わずか1時間程度の相談で、そこまで聞けないことも多々ありますが、相談者の目指す方向性や根っこの価値観が見えてくると、その後、一緒に山登りがしやすくなります。
自分のなかでは、相談者から「実は・・」と切り出されたときからが、本気の相談が始まることも多いなあ、と感じます。
修善寺地域では、NPO法人コトコト企画室のプロジェクトとして「起業相談」を実施しています。地元のアツい中小企業診断士が相談に対応していますので、ぜひご活用ください。
自分のほか首都圏の中小企業診断士チームも、このプロジェクトをサポートしていますので、ときに相談対応に参加してます。
ぜひ、現場でお会いできれば幸いです。
おわり