あなたの家庭の味はなんですか?
うちは山菜の天ぷら
5月のゴールデンウイークになると、実家に帰省しています。
その時、タラの芽とコシアブラなどの山菜の天ぷらが食卓に並びます。
タラの芽は、(普段は家におらず遊んでばかりいる)父が山へ採りに行き、
コシアブラは近くの直売所で母が買ってきてくれるもの。
この時期は観光客に人気があるので、なかなか手に入らないそう。
母は、直売所のおばちゃんと仲良くなって入荷時期をリサーチして
買ってきます。
手に入れた母はいつも自慢げにその話をしながら天ぷらを揚げています。
母はせっせと天ぷらを揚げ続け、父は早々、自分の箸とビールを
用意します。父の「ぼちぼち始めるかい?」は「もう食べ始めようぜ」
の意味。
そして食卓での会話はこんな感じ。
タラの芽編
父 「売ってるタラの芽は大きすぎるよな。
(俺が採ってきた)小さいやつはうまいだろ!」
母 「(居酒屋などの)お店で食べるやつは大きくなっちゃって
おいしくないわよね。家のやつが1番おいしいのよ」
私 「へえ、そうなんだ。お父さんのタラの芽、おいしいよね」
コシアブラ編
母 「お父さん1人でばくばく食べないでよ」
父 「そんなに俺は食べてない。
冷めないうちに食べたほうがおいしいだろ」
私 「お母さんも早く座って食べなよ」
毎年、ドリフのギャグのように繰り返される会話。
若い頃は「何度も聞いてますぅ」と心の中で返答していたが
最近になり思うことがある。
65になった父はあと何年、タラの芽を採ってきてくれるのだろう。
年1回のこの会話を、あと何回繰り返すことができるだろう。
3人の孫と娘夫婦がゴールデンウィークに帰省した際
母はどんな思いで山菜の天ぷらを揚げているのだろう。
父は何を思って晩酌をしながらタラの芽をつまんでいるのだろう。
料理にまつわる思い出を受け継ぐ
今晩の夕食は、もらったタラの芽とコシアブラの天ぷら。
薄く衣つけながら、また父と母の会話を思い出した。
食卓では早くも、味見と銘打って子供たちがサツマイモの天ぷらを
かじり始めた。
今はサツマイモとちくわしか食べない子供たちもいつか
山菜の天ぷらを食べる時が来るのだろう。
そうして私も毎年、祖母と祖父の話を繰り返すのだろう。
家族のつながりは、料理を通して次の世代へと受け継がれていく。
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