絵空事 -soliloquio-
暑い夏はとうに過ぎたというのに、その日はひどく寝苦しい夜だった。
目を開けると、ずきりと胸の辺りが痛む。
――嗚。またか。
とうに慣れ切ったその痛みだったが、何故かひどく気にかかった。
もう長くはないのだろう。
けれど、まだ、もう少しだけ――村人たちの為に。娘の為に。
なぜこの病は治らないのか。
家人に言われずとも、とうに我が身を呪っている。今更、つらいとは思わない。
気に掛かるのは妻のこと。――娘のこと。
子に恵まれない兄夫婦。…思えば、それも私の受けている、物怪の