絶対的な幸せ
幸せは相対的なものであり、絶対的な幸せはない筈だが、よくよく考えてみるといつでも幸せな気持ちになれることが私にはある。
風呂上がりに扇風機の風を顔いっぱいに浴びると、私はいつもすごく幸せな気持ちになるのである。
そしていつもあのことを思い出す。
遠い昔私が勤務していた病院には、高等看護学校と准看護学校の2つの看護養成学校があり、私は両方の学校で小児科の講義をしていた。
その頃の准看護学校の生徒達は苦学生の人が多く、金銭的にも切り詰めた生活を強いられていた。
暑い夏の日の午後の授業が終わった後の会話の中で、寮に扇風機がないことを小耳に挟んだ。
院長に「 扇風機ぐらい買ってやれよ! 」と交渉しようと思ったが、手続きが大変そうなので、扇風機をプレゼントすることにした。
後日皆んながすごく喜んでくれて、入れ替わり立ち替わり扇風機の前で当たっているという報告を受けた。
准看護師の人達が卒業する時、みんなで集めたお金で私に『 幸せの木 』をプレゼントしてくれた。
『 幸せの木 』はその後何十年も我が家で過ごし、ある日の夜にあまい良い香りを放つ白い花をいっぱい咲かせてくれた。
『 幸せの木 』はその後も成長を続け、4メート位になって天井にぶつかるようになった。
現在でも、その木から分岐した子どもが我が家で頑張って生をつないでいる。