会社員を卒業して起業する方に伝えておきたいこと|第一話 基本の心構え
会社をやるって大変!でも楽しい!
コロナ禍によって、仕事に対する向き合い方、仕事そのものの在り方が変化し、少しずつ働き方の多様性が認められるようになってきました。
そんな中、僕の周囲でも、地方移住に合わせて雇用形態を変えフリーランスになる方、早期退職制度を利用して起業する方、会社が副業を認めてくれるので起業する方などが増えています。それに伴って相談されることも増えました。
僕は33歳の時に15年間の会社員生活(自動車メーカー→広告代理店系プロダクション)を経て、クリエイティブファームのワンパクを起業し、経営者として試行錯誤しながら、ここまで約14年間やってきました。
お金もコネも無いところからスタートして、仲間や家族、周囲の人達に助けられつつ、今も悩みながらも、前に歩み続ける毎日です。
実は少し前から、一人の経営者としての悩みながら試行錯誤してきた経験を共有し、少しでも役立ててくれる方がいたらと思ってたので、周囲で独立する方が増えているこのタイミングで文章にすることにしました。
もちろん、世の中には偉大な経営者の書いた経営本やビジネス書があふれていますので、専門的なことはそちらを読んでいただいた方が役立つはずです。
「たかだか14年くらいの経験で何言ってるの?」と思われる方は、僕の少ない経験の中で、好き勝手に書いているだけなので、スルーしてください。
ここでは、ある意味、現実的で残酷なことを書いてしまうかもしれません。読んだ結果、「起業やめた方がいいかなぁ」と思う方もいるかもしれません。
会社をやるって、とてもパワーも必要ですし、スタッフを雇い、クライアントが増えれば、何より”続けなければならない責任”が生まれます。当然ながら会社員とは異なる重圧(特にキャッシュフローなど)に耐えつづけなければなりません。
でも、それらを差し引いても、僕は「会社をやるって楽しい!」と思っています。「これを読んでもやっぱり企業したい!」、「せっかくだから一度阿部さんに相談したい」そんな想いの仲間がどんどん増えてくれれば幸いです。
(その1)本業の仕事以外の沢山の仕事がある
当たり前すぎますが、会社員をやっていれば、所属する企業の中に総務部門、経理部門、人事部門、法務部門があり、それぞれ専門性のあるスタッフがサポートしてくれていました。
もちろん、部門長やリーダーとして、採用面接はやっていたし、契約書のチェックなんかもやってましたという方は多いでしょう。
しかしながら、起業したとなれば、採用後の社会保険・年金等の事務手続きも自分で行わなければならないし、自分の会社を守るためにも契約書の細かなチェックや最終的な判断などを自らおこなう必要があります。
当然、経営者である以上、B/S(貸借対照表)やP/L(損益計算書)をみながら、キャッシュフローも管理しなければなりません。決算もできれば月次でやるのが確実です。
お金を借りるとなれば「事業計画書」や「試算表」も必要です。銀行との交渉もやらなければなりません。
外部の協力してくれる専門家の手を借りるという手段もありますが、社労士、税理士・会計士、行政書士、司法書士などにお願いする場合はそれなりの費用がかかります。顧問契約するならなおさらです。
僕も会社を起ち上げてから5年間は総務・経理をやってくれるアシスタントもおらず、ほぼ自分で全て”土日”を使ってやっていました。
今は便利なクラウドサービスも沢山あるので、スピーディーに対応できる部分も増えているとは思いますが、本質的にやることは変わりません。
小さい規模の会社の場合は、経営者が本業以外にやらなければならないことが、本当に沢山あるのです。
(その2)自分の会社の価値(ブランド)を一からつくらなければならない
会社員時代の素晴らしい実績を引き下げて独立する方もいるでしょう。もちろん、その実績の大半、もしくは一部はあなたの実績なのかもしれません。
また、人に会う際も、大企業であれば、向こうから会いに来てくれたし、そもそもブランド力のある企業名の元に仕事をしていた訳です。
しかしながらその企業を退職した以上、実績は元所属していた企業の実績であり、数年間程度は通用するかもしれませんが、起業した自分の会社での実績を上げられなければ、自分達(自分の会社)の価値をつくっていくことはできません。
また、起業したのであれば、元の肩書きは置いておいて、自分の会社の冠の元で積極的に人に会いにいくことも大事です。
これまで頑張ってきた証でもある、過去の所属企業や実績を否定する訳ではありませんが、大切なのは”起業した会社”であり、”新しい会社の価値”を上げていくことなのです。
(その3)理念がなければ人はついてこない
一人だけの会社であれば法人=個人なので必要ないかもしれませんが、将来的にスタッフを採用していくのであれば、事業内容のみならず、その会社の理念が大切になります。理念とは「考え方」や「価値観」「創業者・経営者の思い」を言葉で表した「指針」です。
もちろん給与や福利厚生などが充実していれば、人材を採用できる部分もあるのかもしれませんが、そもそも論として、一緒に働いていて、同じ方向に向かって進んでいけるのかを、判断する「指針」が無いままで働くことは難しいのでは無いかと思います。
ワンパクの理念は「心と身体にHOTをつくる」です。
人々の心の奥底が熱くなるクリエイティブをつくりたい
熱意を持ち、仕事の中で成長する人が集まっている
プロジェクト自体も熱を持って盛り上げながら進めていく
などの意味が込められています。
また、何年も会社をやっていると経営や仕事の中でも迷いが生じることがあります。その時に、原点に立ち戻って判断するためにも、やっぱり理念がとても大事だなぁと直面する機会が何度もありました。
僕が日本の中で一番尊敬する経営者は「松下幸之助」さんなのですが、最近、パナソニックさんのお仕事で「松下幸之助歴史館」と「ものづくりイズム館」のお手伝いをさせていただいたのですが、あらためて経営者としての器の大きさと理念も含めた言葉の大切さを実感した仕事でした。
(おまけ)商売の基本
シンプルに「商売」の基本を言うとするならば「社会に対して価値提供をおこなう」ことで「継続的に売上げを上げること」、「継続的に利益を生み出すこと」でしょう。
この「継続的に」というのがとても難しいのです。時代と共に社会は変化していき、今は必要とされているものごとでも、3年後、5年後は必要とされなくなる可能性もあります。
また、商売が拡大すれば、「場所」や「人」が必要となり、仕入れ(外部リソース)、家賃やスタッフの人件費などの固定費+交通費、通信費などの変動費=販管費などのコストがかかってきます。このコストが増えれば当然ながら利益は減るわけです。
何年間も会社をやっていると、色々なところで歪みが出てしまい、利益を上げることができない状態(赤字)に陥ることがあります。
しかしながら、企業規模の大小に限らず、歪み解消には、必ずこの商売の基本である、「売上げを最大化する」と「コストを最小化」することに立ち戻ります。赤字を出して必死になっていると忘れてしまいがちですが、基本に立ち戻ることを覚えておきましょう。
あとがき
自分の頭の整理をする上で書いてみたものの、「当たり前だよ!」「そりゃちょっと違うと思うよ!」などのツッコミは多々あると思いますが、温かく見守っていただけると幸いです。不定期になると思いますが、頑張って書いていこうと思います、