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あの日から10年

あの日のフクシマの話を聞きたいとの依頼を多く受けたので
自分の目で見たこと・感じたことを書き記そうと思います。
一意見として参考にしていただければ幸いです。

自身も10年経って記憶が薄れているところもある。
備忘のためにも節目の年に書き記したいと思います。

また、幸いなことに
自分の家族や親戚で亡くなった人はいなかった。
その前提の元、以下に示す当時のリアルな現状を
読んでいただければと思います。

✔︎ 2011年3月11日

あの日、僕は学校にいた。
当時、16才の高校生で
春休みに入るか入らないかの間だった。


僕の地元は福島県いわき市という所。
太平洋に面しており、茨城県との県境に位置している。

親潮と黒潮がちょうどぶつかる、
いわゆる潮目に位置する良い漁場であり
兼ねてから漁業も盛んであった。


その日は高校入試の合否判定か何かで
学校は午前中のみで午後からは部活。

その日のメニューはウエイトトレーニングだったため
部活の面々とウエイトルームでトレーニングをしていた。


そしてその時はくる。


最初は少し揺れだしたくらいだったと記憶している。
みんなで「地震だ、地震だ」と笑いながらふざけていた。

しかし、一向に揺れはおさまらず、
今まで経験したことのない程の揺れが襲う。

みんな顔色が変わり、一目散に窓から飛び出す。
僕も慌てて別の出口から外へ飛び出す。

揺れはおさまらない。

立っているのも困難な状況。
目の前の駐車している車たちが今にも動きだしそうになっている。
この光景は今でも鮮明に覚えている。

『どうなってしまうんだろう』
漠とした恐怖を覚える。

1分ほど揺れただろうか・・・

ひとまずみんなを探して合流する。
早い者は自身のガラケーを取り出し
情報収集・親に連絡を取ろうと試みている。

しかしネットも電話も繋がらない。


その日は季節外れの寒さ、雪もちらつく。

ひとまず全員で合宿所の食堂に集まる。
神棚から落ちた花瓶の破片が散乱する
世紀末感漂う教室でテレビをつけた。

テレビをつけると
もうそれは見たこともない、
自身の脳では処理できない映像が流れてくる。

仙台市若林区の田畑に波が流れ込む様子。
波が徐々に田畑を飲み込んでいく。

そんな中、当時の英語の先生が
『アクアマリンの天井まで波来てるらしいぞ』と。

アクアマリンとは海の目の前に位置する
水族館のことだ。

あんなデカい施設の天井まで波が来てるとなると
『ああ、終わったな』
と思わざるを得なかった。


電車も止まり家族の安否も不明で途方に暮れる。
自身の家は当時で築30年程度。

『ダメかもな・・・』
という一抹の不安がよぎる。

チラホラと帰り出す連中も出てくる。

ひとまず何も手段がないため
テレビから流れてくる映像をただ見ているしかなかった。


2時間ほど経ったであろうか。
家が近い友達の父が車で迎えに来た。

僕と家が近い何人かは
近くまで送ってもらうことにした。


家までの道程、
変わり果てた街の姿を目の当たりにする。

塀という塀は全て倒れ、
道路に散らばっている。

信号待ちをしていると、
平気で震度5程度の揺れが襲う。

そんな”非日常”の中、家路を急ぐ。


道中、同乗していた先輩が
トイレに行きたいと言い出したため
コンビニに立ち寄った。

コンビニに入ると、中はいつも見ていたコンビニとは
様相を異にしていた。

揺れによって、物は床に散らばり
そんな中でも食料品が一切なかったのだ。

『食料買えなくなるのか・・・?』
また新たな不安が脳をよぎる。

肝心のトイレも水が止まったから使えないということで
その場を後にした。

食料は売ってない・水は止まってる
徐々に現状が明らかになっていく。


結局家の近くに着いたのは
真っ暗になってからであった。

家が原型をとどめていることを確認して
ひとまず案したことを覚えている。

玄関にたどり着き、家に入ろうとすると
貼り紙が貼っていることに気付く。

『小学校に避難しています』

ネットも繋がらない、そんな中で
超古典的な方法が情報伝達手段になるんだと
実感した。


ひとまず近くの小学校に向かうことにした。
小学校の体育館には200人ほどが避難していた。

その中でまずは両親を探す。
10分ほど探しただろうか、無事に両親を見つけるに至った。

意外にもあっさり
『ああ、おかえり』的なノリで出迎えられる。

それもちょっとどうなんだと思いつつも
現状の確認をする。

とりあえず、家の中はめちゃくちゃで
ガスが止まっていて、電気だけが使える
そんな現状であることを確認した。

ネットや電話は依然使用できず
兄とも連絡は取れていない。

現状が確認できたところで
支給されたマットの上で毛布にくるまる。

地震の発生から10時間程度。
やっと落ち着くことができた。

『明日からどうなってしまうのだろう』
そんなことを考えながら、その日は眠りについた。


思ったより長くなってしまいそうなので、
原発の話等々はこちらにまとめました!




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