真夜中のシロップ。
実際は二者間での、口頭でも自筆でもそんな取り決めはない。
わたしがただ「わたしだけのもの」と思ってるというだけ。
口にすればアブナイ人なのだろうな。
でも実はそういう人や、人との空気というのはいくつかある。
邪な気持ちが入ったりするものではなく、純粋な「しったかぶり」のようなものかもしれない。
細かい所なんかなんにも知らない、しったかぶり。
ほんの一角、断面にすぎなくても、わたしにその部分しか知られたくなくても。
興味がないから、ではなく。
知りたくないから追求しない、でもない。
知らせようとか、打ち明けようとか、くれるものだけを受け取って知っていきたいだけ。
慌てふためいて自己紹介したり、沈黙を気まずいと思わせてるかもしれないという気づかいは必要ない。
口頭の約束や、自筆での取り決めで「成立した」大事な人が存在したり、していたりすると思う。
その取り決めのせいで、もう取り返しがつかないようなところまで来ていてしまったり、関わったりすることができなくなったりする。
想い人が、実は自分のことを想ってくれていたらそれはとても幸福なことなのかもしれない。
同時に、それを知ってしまったがために、成就に至るまでひたと想っていた自分はどこに行ってしまうのだろう。
どこかへ行ってしまったと錯覚しないために、誰かに覚えていてほしいのではないだろうか。
彼が知っていることを、わたしは知らないし。
それはちょっと悔しい気もするけど、でも悔しいなんて思ってはいけない気もする。
その代わり、彼の知らないことを少しだけ知っていたりする。
大事にしているように、うまく見せて、大事にしていないのが悪いんだ。
声に出さない苦しいが聴こえない人に、わたしが大事にしようと決めた人はあげない。
誰かに、嫉妬心だとか、怒りだとか、ぶつけられても。
実際そんなふうに思う資格がなくても、わたしの心根がそう思っているのだから、どうもしようがない。
依存であっても別にかまわないし、むしろ開き直っている。
決して、野暮ったいとか、余計だとか煩わしく思わせたくなく。
仕事が終わり家に帰ることが自然のような、布団に入ったら自分の体温で熱が広がるような、「当たり前」でいたいだけなのだ。
過去に目を向けて、その過去は眩しすぎるほどに大切で、それはずっと大切にしていていい。
わたしもずっと大切にしていくものを持っている。
ただ、目を向けて、わたしの人間臭くてきれいではない心のうちで、指をさして声を上げる者がいるのだ。
「いいだろう、おまえにはあげねぇよ」
わたしももらっていないのだけれどね。