南極条約に批准していない国は南極の領有権を主張できるのか
結論、無理である。
南極条約の基本原則
南極条約(Antarctic Treaty)は1959年に締結され、1961年に発効した条約であり、主に次のような原則を含んでいる。
南極は科学研究と平和目的のために利用されるべきである。
南極での領有権主張の凍結(既存の領有権主張は維持されるが、新たな主張や拡張は認められない)。
軍事活動の禁止。
これにより、条約加盟国は南極の領有権を主張することを控え、国際協力の場として運営されている。
日本の関わり
日本は、1960年に南極条約に署名し、1961年に発効した南極条約の初期メンバーとなった。日本の参加は、南極の科学調査を推進する国際的な協力の一環として重要だった。
日本は、南極における科学調査に積極的に関与している。日本は1956年に「昭和基地」を設立し、その後も研究活動を続けてきた。昭和基地は、南極での日本の恒久的な拠点であり、気象学、生物学、地質学などさまざまな分野で研究が行われている。
日本は南極環境の保護にも関心を持ち、1978年には「南極環境保護議定書(南極保護協定)」に調印した。この協定は、南極の生態系や自然環境を守るための規制を強化するもので、廃棄物管理や野生生物保護などの具体的な取り組みが盛り込まれている。
条約に未加盟の国の立場
南極条約に批准していない国は、理論上、新たな領有権主張を行うことは可能である。ただし、以下の理由で実現可能性は低い。
国際社会の承認の難しさ
領有権を主張したとしても、南極条約に加盟している54か国(2023年時点)の圧倒的多数がその正当性を否定する可能性が高い。国際的承認が得られなければ、領有権主張は法的な裏付けを持たない。
既存の領有権主張国の影響
南極条約発効以前に領有権を主張していた7か国(イギリス、フランス、ノルウェー、オーストラリア、ニュージーランド、アルゼンチン、チリ)の主張は凍結状態にあるが、それ以外の領域は「無主地」とみなされているわけではない。
南極条約体制の下では、新たな領有権主張を国際的に認める仕組みが存在しない。
実効支配の難しさ
南極は極端な環境のため、実際に領域を支配し、管理することが非常に困難である。
また、南極条約加盟国の共同管理体制に対抗するだけの経済力・技術力・国際的支持が必要となる。
条約未加盟国が南極で活動する場合
南極条約に加入していない国も、南極での科学研究や活動を行うことは可能である。ただし、その場合でも以下の点に留意する必要がある。
南極における活動は南極条約の原則に従うことが期待される(例:環境保護、平和利用)。
他国の研究基地や施設に対する干渉や破壊行為は国際法上許されない。
結論
南極条約に批准していない国が南極の領有権を主張することは理論的には可能である。しかし、国際的承認の欠如や実効支配の困難さ、南極条約加盟国による反発を考慮すると、現実的には実現不可能に近い。結果として、南極は引き続き国際協力の場として維持される可能性が高い。
(補足)
もしこのまま地球温暖化が進み、南極大陸のみが人類生活可能な土地になったら、平和と科学利用を目的とする南極条約の前提が覆るので、その時は領有権を主張できるかもしれない。ただ、そんなときは領有権などと言ってる暇はなく、人類が互いに協力し合うべきである。