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なぜ円の価値はここまで暴落したのか?



円安が止まらない。数年前までは1ドル=110円前後だったのに、今では140円、150円、さらにはそれ以上になることも珍しくない。なぜこんなにも円の価値は下がり続けているのか?

日本経済が弱いから」「アメリカの金利が高いから」――よく言われるが、実際のところそんな単純な話ではない。今回は、円安がここまで進んだ背景を 「金利」「貿易」「市場心理」 の3つの観点から解説し、今後どうなるのかを考えてみよう。


1. 最大の要因は「金利差」 – 円を持つ理由がなくなった


まず一番よく言われるのが 「日米の金利差」 だ。これがどういうことなのか、シンプルに説明しよう。

① アメリカの金利は上がり、日本の金利はほぼゼロ

アメリカはインフレ対策として2022年から 急激な利上げ を行い、政策金利は 5%を超えるほどになった。

2022年、アメリカは 「40年ぶりのインフレ」 に直面した。
コロナ禍の景気対策で大量のドルが市場に出回ったことや、ロシア・ウクライナ戦争によるエネルギー価格高騰が重なり、物価が急上昇。

これを抑えるため、 FRB(アメリカの中央銀行)は「異例のスピード」で利上げ を開始した。
• 2022年3月:0.25% →  利上げ開始
• 2022年6月:1.75% →  過去30年で最速の利上げペース
• 2022年9月:3.25% →  わずか半年で政策金利が3%以上に上昇
• 2022年12月:4.5% →  1年で4%以上の利上げ


一方、日本の政策金利は ほぼゼロ(0.1%未満)。


この金利差が生まれると、どうなるか?


・ ドルを持っている人は、銀行に預けるだけで年5%以上の利息がもらえる
・ 円を持っていてもほぼ無利息(0.1%以下)

つまり、投資家たちは「円なんか持ってても意味ないじゃん」と考えて、円を売り、ドルを買う。この流れが続けば続くほど、 円の価値は下がり、ドルは上がる(=円安になる)。

2. 日本は「貿易赤字」が続いている – 円が海外に流出


次に、円安の大きな要因となっているのが 「貿易赤字」 だ。

② 日本はモノを売るよりも買うほうが多くなった

かつて日本は 「貿易黒字国家」 だった。トヨタの車やソニーの家電が世界中で売れ、外貨がどんどん日本に入ってきたからだ。

ところが今、日本は 「貿易赤字」 が当たり前になっている。つまり、 輸入(海外からモノを買う)のほうが、輸出(日本の商品を売る)よりも多い。

・ エネルギー(石油・天然ガス)を大量に輸入(しかも価格高騰)
・ 円安で輸入コストが増え、さらに貿易赤字が拡大
・ 海外に円を渡してドルを買うため、円がさらに安くなる

こうして 円の需要が減り、円の価値が下がる という悪循環に陥っている。


3. 「市場心理」が円安を加速させた – みんなが売るから売る


ここまで金利と貿易の話をしてきたが、もう一つ見逃せないのが 「市場心理」 だ。

③円は「安全通貨」じゃなくなった?

これまで円は「有事の円」と呼ばれ、 世界の投資家たちがリスクを感じると円を買う 傾向があった。だが、最近はその流れが変わりつつある。

・ 日本の経済成長が停滞し、円に魅力を感じる人が減った
・ アメリカの債券(金利5%以上)にお金が流れている
・ 「日本は円安を止める気がない」と市場が判断(政府・日銀が介入しない)

このように、 「みんなが円を売るから、さらに円が安くなる」 という連鎖が続いている。

円安は日本にとって良いのか? 悪いのか?


ここまでの話を聞くと、「円安って日本にとって最悪なのでは?」と思うかもしれない。確かに、 円安にはデメリットが多い。

円安のデメリット
• 輸入品の価格が上昇し、物価が高騰(食料品・ガソリン・電気代など)
• 海外旅行が割高になる(1ドル150円なら、100ドルの買い物で15,000円)
• 賃金が上がらないまま物価だけ上がると生活が苦しくなる

しかし、一方で 「円安のメリット」 もある。


円安のメリット
• 日本の企業が海外で稼ぎやすくなる(トヨタやソニーは円安で大儲け)
• 外国人観光客が増える(円が安いと日本が「格安旅行先」になる)
• 輸出産業が好調になれば、国内の景気も良くなる可能性


結局のところ、 「円安で得をする人」と「円安で損をする人」がいる というのが本質だ。

今後、円安はどうなるのか?


では、今後円安はさらに進むのか、それとも円高に戻るのか? これを予測するのは難しいが、ポイントは 「日本の金利政策」と「アメリカの動き」 にある。

今後の円相場に影響を与える要因

1. 日銀が利上げに踏み切るかどうか
• 日本が金利を引き上げれば、円の魅力が増し、円高に向かう可能性がある。
2. アメリカが利下げを始めるかどうか
• アメリカが利下げすれば、金利差が縮まり、円安が止まるかもしれない。
3. 日本の経済が回復するかどうか
• 日本経済が活性化し、貿易黒字が増えれば、円安の流れが変わる。


ただし、今のところ 日銀は慎重な姿勢を崩しておらず、アメリカもすぐには利下げしそうにない。そのため、短期的には 円安基調が続く可能性が高い と見られている。


結論


まとめると、 「日米の金利差」「貿易赤字」「市場心理」 の3つが円安の大きな要因だった。

・ 日本は金利をほぼゼロに据え置き、円の魅力が低下
・ 貿易赤字が拡大し、円が海外に流出
・ 「日本は円安を放置する」と市場が判断し、円売りが加速

この流れが変わるには 「日本が本格的に利上げする」「アメリカが利下げする」「日本の経済が回復する」 のどれかが必要だ。

今後の円相場は、これらの要因をしっかりチェックしながら見守っていく必要があるだろう。

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