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ホームセンターのコンシェルジュ#2『となりのプロから』


百貨店で学んだ接客の本質

前回からの続きになります。
前回の話は→
こちら

水鳥:百貨店での営業のお話をもう少し伺ってもいいでしょうか?

Nさん:百貨店では百貨店社員でなくても、胸にバッジをつけた店員さんを見かけことがあると思いますが、あのバッジを簡単につけてお客様と接客させてもらえるような、甘い世界ではありませんでした。

大学を卒業したばかりでしたので、人様にきちんとした挨拶もできない男子学生でしたから、かなり応対教育の指導を受けました。

例えば、いらっしゃいませの顔は表情で、感情を伝えるということが、まずできませんでした。私は劣等生でした(笑)

バッジをもらうまでに、女性の方なんてすぐ卒業していくんですよ。それから遅れること3週間~4週間、ずっと鏡を見て笑顔を練習しました。「目で訴えなさい」と言われている意味を理解するまでに時間がかかりました。
それが接客応対の入り口でした。

そこでとても大きなことを学びました。

お客様が何を知りたいか、何のために足を運んでくれたかということを深く知るということです。そこにあるモノをつかまない限り接客はできないと。

お客様の困りごとを解く

Nさん:私も今その言葉を若手の皆さんに伝えますが、ベッドを見に来たお客様に、ベッドの説明をしただけでは「へぇ、そうなんだ、どうもありがとう」で終わってしまう。

お客様が来てくれた本質を聞き取ることで、それに合わせて商品をご提案できます。
そして提案してもらった商品に対してお客様の頭の中には「さて、これはどうだろうか?」という疑問が生まれます。

そこにコミュニケーションができる店員がいることで「これ、どう思いますか?」とお客様から投げかけられた時に「~だったらこれはいいと思います」
「~であるならば違うものにしましょう」と話がどんどん広がっていきます。

お客様の「〇〇は、どうしたらいいだろう?」とか「こんなの欲しいんだけど、何が何だかわけがわからない」というような困りごとを聞き、それを解いてあげる。これが販売の第一歩であると思います。

「質問力を磨きなさい」と言われた当時は、全然わかりませんでしたが、そういうことだったんですね。

従来のホームセンターとの接客の違い

Nさん:ホームセンターと家具屋の一番の違いは、家具屋さんはそういう話ができるところです。

ホームセンターはネジ1個、ティッシュペーパー1箱、それを欲しいと思ってお客様はカゴ入れて行かれるわけですから、ホームセンターの接客というのは「ラップはどこにありますか?」「12番通路にございます、右手奥の方にございます」っていうのが普通です。

しかし家具も扱う専門店の場合、それではダメなんです。

お客様も全く違う次元で来ていますから、ホームセンターの中でもワンランク上の専門店として、お客様と対話をしながら自分たちの商品をご理解していただいて、その結果、お代としてご購入いただくという流れが、従来のホームセンターやスーパーとは違います。

水鳥:ホームセンターでありながら、専門店としての高い接客を求められているということですね。

現在は家具インテリアの小売り店や、ドラッグストアなど、販売する商品が増える業態も多く、互いに競合する部分もありますが、その中でホームセンターとして差別化できることは何だと思いますか?

Nさん:はい、まずですね、商品的なことで言えば住宅のお悩みのすべてが当店で賄えるのが強みです。
そしてその中の専門店があって、専門店のスペシャリストがいて、お客様との会話ができる。これが他店との違いだと思います。

世の中にはいろんな家具屋さんや小売店さんがあり、ここよりも膨大な商品が置かれているお店はあります。
でもそこに店員さんは何人いますか?
たくさんの商品があっても、お客様のニーズを汲み取って提案したり、優しく声をかける店員はいるでしょうか?

そういった形でお客様の困りごとに対して、ブランド名やネームバリューを武器にするのではなく、人がこの専門店を支え、お客様のファンを作る。

買う買わないは別にして「また困ったらお願いするね」などとお声がけをいただくことで、ファンを作ると考えれば、私達が進むべき方向は見えてくるのではないかと思います。

ポチるのとリアル店舗で買う違い

水鳥:私は今回、ベッドのことを相談させてもらって、どうしてもネットではわからないことや、何が本当は知りたいのかもわからず、モヤモヤした気持ちでお店に来ました。

しかしNさんに相談すると、びっくりするくらいモヤっとした部分が晴れたことで、人の持つ接客力の力を感じました。
これって、AIなどが日々進歩している現代でも、ここまでの技術は、まだ難しいのではないかと思います。

Nさん:情報過多の中で選ばれるものは、これでいいやって思えるものならいいと思うのですが、
今言っているようなベッドだとか、リアル店舗に来て寝てみて、自分の体に合った物を求められる場合、今のお客様はより自分の求めているものに近いものが欲しい方が多い気がします。

だからたくさんの店舗をまわって、どれがいいのか検討されるような探し方をします。
ではインターネットの場合は、何を決断基準にされるかというと、価格です。

商品の価格以外のサービスといっても物流経費くらいで、これでこんなものならいいかな?と思って買う。そんな両極端な気がします。

世代で言えば、年配の方は間違いなくネットでポチっとはしません。「これだけの金額を払うのだから、どんなメリットがあるのか、ちゃんと教えて欲しい!」と考えている人が多いのです。

若い方がネットで探す場合は、極端な話ですが、例えば1万円の予算で何かを選ぶとしたら、1万円の金額で買える最高のデザインや機能のものをスワイプして探します。

ページをめくってめくって得た情報の中から、これにしようと判断するので、もしそれが思ったものと違っても、そのリスクも自分で取ります。

つづきます→他店舗で得られなかったもの

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