#0062【イブン・ハルドゥーン(イスラム世界、14世紀)】
1日1分歴史小話メールマガジン発行人の李です。
中世イスラム世界から今日はイブン・ハルドゥーンを紹介します。
イスラム世界に多い「イブン・ABC」という名前ですが、これは「ABCの息子」という意味です。アラビアの部族社会においては自分がどういった家系に連なっているのかが重要であったことから、こういった名前で後世に伝わることになります。金曜日に紹介予定の人物も「イブン・XX」です。
紛らわしいですし、馴染みの薄い方々なので記憶に残って頂けるよう、業績を中心にご紹介します。
イブン・ハルドゥーンは1332年に北アフリカのチュニスに生まれ、地元チュニスからモロッコ、イベリア半島、エジプトと各地で政治家・イスラム法学者として重んじられ、1406年にエジプトで没します。
彼はイスラム世界最大の学者と称されています。
各地で政治家として活躍できた理由は、彼自身が優秀な人物だったからですが、仕えた王朝が滅亡したことや再就職先で妬まれて転出を余儀なくされたことから一か所に落ち着くことが出来ずにイスラム世界を移動していった面もあります。
こういった状況下で彼は西アジアのイスラム史の体系化を試みることにします。なぜ王朝は興亡するのか。この疑問に対する解答として『イバルの書』を書き上げます。この冒頭部分に彼の歴史観のエッセンスが詰まっており『歴史序説』として特に取り上げられて現在に至っています。
イブン・ハルドゥーンは『歴史序説』の中で、王朝の交代は「アサビーヤ(集団における連帯意識)」によるものだと喝破します。
初期の「連帯意識を持つ集団」は強固な団結力によって王朝を建てることができます。しかし徐々に団結力が弱まることから支配力が低下してしまい、やがて次の「連帯意識を持つ集団」に取って代わられると説きます。現代においても、企業の成長にビジョン・目標への連帯意識は欠かせません。
さらにイブン・ハルドゥーンは王朝には5つの段階があると論じます。括弧内はボクが考える現代への当てはめです。
第1段階:王朝の樹立(新製品・新サービスの提供、市場の受け入れ)
第2段階:支配権の確立(シェアの拡充・拡大による業績拡大)
第3段階:王権の安泰(組織安定のために社内設計・制度の整理)
第4段階:伝統主義への満足(前例踏襲という惰性による業務遂行)
第5段階:浪費と荒廃(イノベーションの波に取り残されて衰亡)
王朝の興亡というと、現代との繋がりがないように思えますが、上記括弧のように当てはめていくと現代にも活用できます。
自分が所属する組織が、現在どの段階にあるのか。更なる発展を遂げるためには或いは衰亡から逃れるためにはどうするべきなのか。歴史を紐解くとその答えやヒントが見つかるかもしれません。
以上、本日の歴史小話でした!
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