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#0178【恐怖政治からの保身・反動(バラスとナポレオン、フランス革命)】
1日1分歴史小話メールマガジン発行人の李です。
今週はフランス革命シリーズです。これまで革命初期について取り扱ってきました。
(過去のフランス革命シリーズURLは末尾に掲載。)
前回、急進的な革命勢力であり、強権・恐怖政治をしいたジャコパン派の政権が打倒されるところまでを取り上げました。
フランスは革命後にカトリック教会によって定められたグレゴリオ暦(現在の我々も使っている暦です。)を廃止して毎月を30日の12か月にし、残りの5日(閏年で6日)を年末休暇にあてた暦、革命暦を使用しました。
この革命暦でテルミドール(熱い月)にクーデターが起きて、ジャコパン派の主要メンバーはギロチンにかけられ、ジャコパン派に近かった人物たちも追放されていきました。
追放された人物の中にはナポレオンもいました。
今回取り上げるポール・バラスは、テルミドールのクーデターを主導し、その後のフランスのトップに立ちます。
ジャコパン派が追放された後のフランスは総裁政府と呼ばれ、5人の総裁によって運営されていました。独裁者を生み出さないための措置といえます。
この総裁政府は後にナポレオンによるクーデターで1799年に崩壊しますが、それまでの期間、総裁の地位を保持したのはバラスただ一人なのです。
一般的にはなじみの薄い名前の人物です。特別何かの能力に秀でていたというよりかは、政治家としての嗅覚が強かった人物のように思っています。
ジャコバン派への不満の高まりを受けてクーデターに打ってでる潔さや、苦境に陥った際にその苦境を克服できる優秀な人物を発見し登用する目利き力、さらには場合によっては革命で追放したフランス王家とも連絡を取り合うしたたかさ。
これらが、バラスをしてフランスの第一人者として一定期間権力を保持できた要因だと考えることができます。
一方で、自分の勢力拡大のための多数派工作や賄賂での買収が横行し、政治は腐敗していきました。
強権的ではありましたが、革命の理想(民主主義と平等)を掲げたジャコパン派と比べるとバラスたちの政治は利権集団を形成するようになり、テルミドールの反動やテルミドールの頽廃と呼ばれるような状況となっていきました。
こうして民衆の不満がやがて高まってくると、それまでナリをひそめていたフランス王家を支持する王党派が勢力を伸張させていきます。
パリでテロやクーデターが噂されるようになるとバラスもどうしたものかと頭を抱えます。
その時に一人の人物を思い出します。ジャコパン政権下にあってフランスの地中海に面したツーロン港をイギリス海軍から奪回した若き将軍のことを。
その将軍の名はナポレオン。
ナポレオンはパリ軍の司令官に任命されるとパリ市内に大砲を持ち込み、王党派を一掃します。その後、イタリア方面軍に転任するとフランス革命政府の宿敵であるオーストリア(革命政府が処刑した王妃マリーアントワネットの実家)をイタリアから駆逐し、多額の賠償金を手に入れます。
長らく財政難に苦しんでいたフランスはこれによって窮地を脱します。
そして、バラスたちの腐敗もさらに増していくのでした。
ナポレオンの勢威が伸びていくことによりバラスは自分の権力の座が脅かされることを感じます。老練なバラスはここでイタリア遠征のナポレオンをイギリス方面軍の司令官に転出させました。
バラスの政治家としてのセンスの高さを感じます。
英雄を下手な役職につければ民衆からの非難の的になります。しかし、これ以上活躍されても困る。となれば、実質的な閑職につけるしかない。
フランスにとって、イギリスもオーストリアと並ぶ宿敵です。特に王国時代からもアメリカ独立戦争やインド領有など英仏は闘い続けていました。
その方面軍に取り立てることは、イタリア遠征の英雄ナポレオンとして役不足ではありません。
しかし、当時のフランスの海軍力でイギリスへ攻め込むことなど夢のまた夢。
実質的には手柄を立てることのできないポジションへと移されてしまったのです。
続きは次回に。
以上、本日の歴史小話でした!
No.0070【フランス革命の勃発】
No.0071【ミラボー】
No.0072【ラ・ファイエット】
No.0124【革命のパリへ:ロラン夫人①】
No.0125【ジロンド派の女王:ロラン夫人②】
No.0126【自由とは何か:ロラン夫人③】
No.0160【ペンの力で民衆を動かす:マラー】
No.0161【血塗られた理想主義:ロベスピエール】
No.0162【革命の大天使:サン・ジュスト】
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発行人:李東潤(りとんゆん)
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