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お母さんの思い出



もう昔の話になるけれど、我が家は息子が中学生の頃からテストの日の朝食は「おにぎりと卵のお味噌汁」と決まっていた。というか、私が勝手にそうやって決めていて、これにお漬物や果物、ヨーグルトなんかを付ける感じで、大切なテストの朝は送り出していた。


彼は全然気付いてなくて、私も敢えて言わなくて、というのも、中学生の頃は反抗期だったから、もし言ったとしても絶対に「余計なことすんな」みたいに言われると思ったから、悲しみを回避しながら黙ってそうし続けた。


もちろん高校受験の朝も同じで、無事に終わり、高校生になってからもそれは続いて……言っても良かったんだけど、気付かない彼を黙って応援するのが楽しくて、そのまま続行した。


大学受験。私は体調管理をしたりしながら見守ることしか出来なかったから、食事に気をつけたり環境整えたりして過ごして、センター試験の前に初めて彼に朝食のことを聞いてみた。


そうしたら、やっぱり全然気付いてなくて、それがとっても可笑しくて。「テストの日の朝食、中学生の頃から一緒だったのよ。」って打ち明けたら、息子、最初びっくりした顔をしたけど、ちょっといい顔で笑いながら「へぇ」って答えた。


この時のことはとてもいい思い出。無事に最後までちゃんと送り出せて良かったって心底ほっとしたのも、いい思い出。


*


先日の連休、息子が新しく小さな棚を買ったとかでゴソゴソと片付けをしていて、たぶん時間の止まっている引き出しに手を付けているんだろうなと思っていたら、案の定「いらないもの」って懐かしいものをたくさん出してきた。


私にとってはいらなくなくて、宝物で、もうね、当時の姿が鮮明によみがえってくるものばかりで、しかも隙間に落ちてたとかで「お母さんより」ってメモまであって懐かしくて懐かしくて。


ちょうどセンター試験で使ったであろう鉛筆も「もう用無しです」って感じでまとめられてあって、くすんだキャップ取ったら鉛筆の先が丸くなっていて、色々愛しくて、MONO消しゴムと一緒に私の机にしまった。


センター試験に向かう背中を今でもはっきりと覚えている。


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