あの時代、だった。
キャンパスが閉鎖されている。授業はもちろん無い。
えっ?なぜだって?
「我々はァ〜、断固としてェ〜、戦うぞー!」
俺たちが、闘ってるから、閉まってるの!
ヘルメット被って、ゲバ棒持って、布で顔隠してるから!
(違いますよ、病気が流行っているからですよ)
いや、我々が、大学当局と、さらには国と闘っているから、閉まってるの!
ノンポリの学生共からしたら迷惑極まりないだろうが、我々はやらねばならんのだ。
学費を値上げした大学当局も、安保を通した日本政府にも、我々は反対するのだ!何のためにバリケードを作ったと思っている?
(今を見なさい、今を!今はいつだか、分かってるの?)
今?そういえば、いつだったかな?そんなことはどうでもいいんだ、いずれ、このキャンパスにも機動隊が突入してくる。その対策のために、バリケードを固めてるから忙しい。椅子を、机を、とにかく横倒しにして道を塞げ、塞ぐんだ、ぐずぐずしちゃいられない。
(落ち着きなさいって!キャンパスは開いているし、授業もオンラインでやってるって!)
なんだって?オンライン?なんだそりゃ、聞いたことがない横文字だな。どこかの党派にオルグされて、変な用語でも吹き込まれたのか?ああ?
(だから今を、現実を、見るの!)
それ以上うるさくしたら、火炎瓶を投げるぞ。我々は、革命を成し遂げるために必死なのだ!
おや、ポケットの中で何かが震える。
これは、
スマートフォン、
だ。
*
ああ、そういうこと。
*
「もう、敗けているのさ。」
何も無い。ヘルメットも、ゲバ棒も、火炎瓶も。
*
「愛してる。」
そう言って暮らしていればいいのかい?
*
無理。ロープ、それが答えさ。
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