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できる人の話し方
昔、なぜか会社に来た営業の対応させられたことがある。
ネイビーのスーツでとんがった革靴を履いたTHE営業みたいな人だった。
「弊社は御社にフルコミットしてイノベーションを起こします」
モップ屋さんがどんなイノベーションを起こすかわからないが
私みたいなメビウスくらいしかわからないバカには
この営業の人が言ってることが半分以上わからなかった。
「あの営業できるよなー」
上司の人や先輩はみんなそう言っていた。
「あれができる人なんだなー」と思っていた。
時は経ち、わたしは平和島の競艇場にいた。
行ったことがある人はわかると思うがあそこはすごい。
ドンキ、パチンコ、競艇場があり
駐輪場は、バラされた自転車、バイクが放置されて
たぶんスラムってこんな感じなんだろうなって思う。
わたしも人のことを言えないけど
クズしか集まらない地域だと思う。
大井競馬場や平和島競艇が荒れるのは
クズによる磁場の歪みのせい。きっとそうだ。
その日、平和島開催はなくて隣の平和島劇場に行った。
入るとでっかいモニターと小さいモニターと
小さいおじいさんがいっぱいいた。
そんなわたしはまず喫煙室に行く。
入るとおじいさんたちが
「1-3に決まってんだろ」
「4-1だって」
とブレイキングダウンと言うにはボリュームが足りない
小競り合いをしている。
「1-2-4だと思ったんだけどなぁ...」
「1-2-4なんだよな...絶対」
と自販機の近くで舟券を見ながら独り言を言うおじいさんもいた。
そんな中、タバコ吸うとちょっとタールを強く感じる。気のせいだ。
吸い終わり、アイスが食べたくなって自販機を探していると
無料の水とお茶のサーバーに
「ここにタンやその他を吐かないで下さい」
と言う貼り紙があった。
百歩譲ってタンはわかるけどその他を吐くってなんなんだ。
でもまわりを見るとその他を吐きそうな人ばっかりだ。
ここは魔界だ。
お昼ごはんを食べてわたしは桐生のモニターの前にいた。
展示を見て舟券を買って
おじさんたちと一緒にレースが始まるのを待っていた。
わたしは1-2-345、1-345-2を買っていた。
いよいよレースが始まった。
1がターンで膨れて2が差して
結果、2-1-5だった。
反応を見るとみんな1の頭から買ってる感じだった。
「ほら見ろ!だから言っただろ!2-1-5だって!!」
大きい声がしてそっちを見るとおじさんが叫んでる。
誰に言ったか知らないけどおじさんは1人だ。
「だって2-1-5だもん!!2-1-5!!」
別に2がA1の選手な訳でも
特別モーターや選手の2枠の成績が良いわけでもない。
でもおじさんは周りのおじいさんたちに絡み始める。
「1-3なんて来ないよー!!だって2-1-5だもん!!」
人の舟券を見ておじさんは騒ぎ始める。
「なんで2-1-5だと思ったの?」
絡まれたおじいさんが怪訝そうな顔でおじさんに聞いた。
「だって2-5-1は万舟だもん」
エビデンスも何もない答えだった。
知性のかけらのない答えにおじいさんたちは
次のレースに散って行った。
このおじさんを見た後、あの営業の人のことを思い出した。
あのモップの営業の人も
「このモップめっちゃホコリ取れるんですよー」
わたしみたいなバカにはこれくらいで伝わったんだろうなー。
イノベーションもコミットも必要ない。
できる人は相手に合わせて話す人だとおじさんに教えてもらった。
「次のレース何買うの?」
「アルマジャックの複勝と流しでもろもろ」
「なんで?」
「だってウチパクだもん」
「なんだそれ、聞いて損した」
てめえ、ルメールや川田だったら納得したろ、バカヤロー。