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謎、つながるろうか

私は記憶力が良いほうだ。

例を挙げたいところだが、何故か良いエピソードが浮かんでこない。忘れているのか、存在していないのか、それすらもわからないのだからしょうがない。人の記憶なんてものはイイ加減なもんですな。ええ。

幼き頃の体験なんですが、すごく印象的な出来事がありまして。それは今でもハッキリと思い出せるくらい脳裏に鮮明に焼き付いております。
ええ、たぶん。



アレは確か、まだ小学校就学前の頃です。
保育園に毎日せっせと通っておりました。
その保育園は玄関から右手にはお遊戯室(体育館的な)、左手には教室が2つか3つ、階段を上って2階の教室は5つほどだったでしょうか、田舎の保育園にしては大きな建物だったと思います。

私はその保育園が大好きで、園が休みの日でも柵を乗り越えて遊びまわっていたほどでした。防災用非常滑り台を逆から登り、防護柵を乗り越えて2階のベランダに侵入、そこから屋上園庭に忍び込み、はしごが途中までしかない屋上へ登頂。当時から背が高かったことに加えて、猿のような運動能力を保持していた私には何のことはないミッションでした。

もう〇〇年以上も前のお話です。勘弁してください。何故、怒られなかったのでしょうか。この謎は少し成長した後で分かることになるのですが、当時の1号少年は知る由もなかったのです。それはまた別のお話。


お迎えが来るまでの間

保育園は当日のプログラムが終了すると、あとは帰るだけとなります。基本は親のお迎えを待つというスタイルでした。しかし、そのお迎えが来るまでの僅かな時間であっても子どもというのは全力で遊び倒します。

その日、何人かの友だちと2階の廊下を走り回っておりました。順番や速さ、コース、ぶつかるかどうか、そんなものは一切関係のない危険極まりないただの暴走です。子どもというのは何を考えているのかわからないのです。無意味なことを自分で無意味だと発見するまで実験は続くのです。

2階の廊下を走り回った私たちは、いつしか止まることを知らず、走り続けました。走り、続けたのです。

端まで行ったら無意識に往復していたはず?

いくら小さい子どもとはいえ、走り続ければいつかは終わりが見えてくるものです。それは屋内であれば物理的に壁が迫ってくるからです。にもかかわらず、我々は想像しているよりも長い距離を走っていることに気が付きました。階段に背を向けて走っていたはずなのに、目の前に階段が現れるのです。


壁までたどり着いた後に無意識的に踵を返し、来た道を戻っていただけ。それならば納得もできるのですが、目の前に開ける景色が全く違うのです。2階の廊下を往復していただけの私たちの目の前に現れたのは、お遊戯室だったのです。


そんなわけがない、ここは2階なのだからお遊戯室があるわけがありません。しかし、未満児の部屋と見間違えたわけではありません。だって右手には玄関があったのですから。その間に作戦司令室(せんせいのおへや)がありました。

「…へへっ」

とりあえずニヤニヤした私は、ことの重大さに気づかずに来た道を全速力で戻ってみました。もちろん階段を使わずに1階の端をめざしました。
すると右手に見たはずの階段が、今度は左手に見えます。そうです、階段を使わずして2階に戻ることができたのです。私たちは歓喜しました。いや熱狂といっても良いのかもしれません。当時流行りの兆しを見せていたファミコンになぞらえて「うらわざ発見!」と騒ぎ立てました。

その日、何度も2階と1階を行き来しましたが、何度やっても成功しました。保育園の保母さんたちに話しましたが信じてもらえず、試しに2階から1階まで競争してみました。当然、大人なので保母さんが勝つわけですが、違和感を持ったのは間違いありません。追い越された気配はないのに、子どもたちが1階の廊下の端から走ってきたからです。

保母さん「なに?なに?どうして?」

そう聞かれましたが、頭の悪い田舎の子どもたちにわかるわけもなく「…へへっ」としか説明することができませんでした。今思い返しても納得のできないルートです。いかにして階段を使わずに1階へ降りたのか、そして2階へ上がれたのか、方法がわからないのです。

突き当りには窓があるだけ

GoogleMapで確認しました。
増築されていましたが、当時の建物をそのまま残しています。かなりしっかりした作りの保育園でした。突き当たりの壁の外には災害用非常滑り台がありましたが、出入りできるような位置ではありません。もしかしたら建物の中に入ってみたら、何か思い出せるかもしれないのですが、こういう懐かしみおじさんは大変危険で、完全な不審者ですので保護者の皆様におかれましては十分にご注意いただきたいと思います。

当時の話を友達にきいてみたい

こういった話の場合、大抵は友達がその出来事を覚えていなかったりするのが定番です。ですが、今回はその定番までたどり着けません。なぜなら、当時の友達のことを全く思い出せないのです。名前や背格好、服の色、年齢、あだ名、全てがぼんやりして霞のようなフィルターがかかって…
すみません。恐れずに言うのであれば、どちらかというとモザイク越しにみえるような、思い出せるような出せないような、ゴチャっとした感じです。


当時は特に怖い思いも、変な感覚もなく「これはべんり」としか思っていませんでした。アレは私が見た白昼夢だったのか、空間の歪みだったのか、今でも真実は分かりません。


急に思い出した夏の思い出です。


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