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二次元オタクが池﨑理人にドハマリした経緯

ふと気分転換に本屋へ立ち寄った夜のことだった。

本屋という空間には、独特の雰囲気がある。多様な分野の本がひとところに集められ、多様な目的を持つ人々が自らの目的にあった本を買うためにそのひとところに集まる。静かながらに心のときめきを感じられるようなその空気が好きで、私は何を買うとも決めずに本屋の中をぶらりと歩いていた。


雑誌コーナーの、音楽カテゴリの前を通った。その瞬間、ある雑誌の表紙に目をひかれた。

1OC Vol.5。その表紙を飾る集団の一番右に立つ人物。一瞥してほかに移した視線をすぐに引き戻された。そしてその視線を離せなくなってしまった。二度見からのガン見だった。


1OC Vol.5 表紙
一番右に立つ人物さん(仮名)


え? この方のお生まれは美術館だったりしますか?


自分は、物に対してこそあれど、人に対して一目惚れをするたちではないと思って生きてきた。にもかかわらず、ここにきてチョロいくらいの一目惚れだった。


何者だ? そう思って雑誌を手に取った。まだその雑誌が何を特集しているのかも、彼らがどういう集団なのかも知らなかった。ただ一人の男の顔面に惹かれて表紙をめくったのである。

表紙の次にまず表れたのはボードピンナップだった。そこにもその顔はあった。いやご尊顔がおありになった。芸術品。もはや重要文化財の類やんけ。

ぺらぺらとページをめくっていき、その男個人の特集ページを見つけた。左右に大きく映し出される顔、顔、顔、顔、顔。一年分のデザートを食べた気分になるような、とても満足感のある二ページだ。顔が良すぎる。

そしてそこでようやく、彼の名前を知った。


──池﨑理人。


名前も素敵すぎるだろ!!!!!


池﨑理人というなんかとてつもなく眩しい顔面を持つ男がこの世界にいるらしい。その事実を一番の収穫としてその日は本屋を立ち去った。


翌日のことである。空いた時間に、ふとその顔面をはっきりくっきり鮮明に思い出してしまい、池﨑理人という名前を検索してみた。もうこの時点で結末は予想できるくらい惹かれている件については見ないふりをした。

彼はINI、というグループのメンバーであるらしい。アイエヌアイ? イニ? 最近のアーティストのグループ名はややこしくて初見でスッと読めないのが多すぎた。なんて読めばええねんと思って調べれば、アイエヌアイで良いらしい。これがINIと私の出会いである。


残念ながら、私はあまりにも芸能界隈に疎かった。男性アイドルといえば、ジャニーズ系とK-POP系に大きく分かれるような感じっぽい、という程度の知識しかなかった。派手な髪色のアイドルは後者に多い。そんな感じだった。

そんな感じだったものだから、INIの成り立ちについてもなんとなくの理解度だった。なんか韓国だか日本だかでやったオーディション番組で結成したアイドルグループってことですか? そんな感じである。なぜ人は争うのか。争いは人を生む、そういうことなのか。


INIのメンバーは11人いるらしい。お、多すぎ!? 多すぎてさすがに池﨑理人以外の顔と名前覚えられへんがな。そう思いながらも(そう思っていた時期が私にもありました)、各メンバーについて紹介してくれているサイトをとりあえず流し読んでみる。


アーティスト写真


池﨑理人。福岡県出身。二〇〇一年生まれ。


拙者と同い年!?!?!?!?
二十三歳があんな完成された美を体現できて良いものかよ。どんな二十三年間を送ったら美そのものになれるんだよ。池﨑理人のお父さんとお母さんありがとう。
もうこの時点で頭はおかしくなりそうだった。


なんとか正気を保ちながら読み進める。

超低音が魅力的なラッパーで、落ち着いた声と佇まいで周囲を癒やす一方、グループの中では年下に分類される(ちなみに私はこのとき初めてマンネという概念を知った)。頭が良く、ユーモアのある発言で場を盛り上げるムードメーカー。


……あの、情報量さん!?

属性過多だろこんなん。説明をされてもぜんぜん人物像が掴めていないんですが……。三次元にこんなキャラの濃い人間がいていいのか。いや属性描写の取捨選択をしなくてもいい三次元だからこそ許されるのか? とりあえず文字を読むだけではなんもわからんことだけはわかった。


ということで、満を持してINIさんの楽曲を聴いてみることにした。YouTubeでオフィシャルMVなどの出されているものを適当にピックアップして視聴。YouTubeの視聴履歴によるとFANFARE、SPECTRA、Dramatic、Rocketeerの順で聴いていたようである。


……。


いや声もいいんかーーーい!!!!!


というか全員の歌声の厚みえぐ……低音から高音まであってこんなにそれぞれの声質を持っているのにそれが重なるとぴったりハマる感じがめちゃくちゃ気持ちえ〜〜〜…………なんやこれ……。という具合で、耳に残るフレーズとダンスが楽しくて気がついたら何度もめちゃくちゃループしていた。あと毎度映る池﨑理人の顔が何度見ても良い。


Youtubeショートに流れてきたDramaticのダンスを観て(隣りにいるメンバーとハートを作りたい池﨑理人可愛いやんけ……と思うなどした)、パフォーマンス動画をいくつも観るようになり、おすすめ欄に無限に流れ始める切り抜き動画を観始めたらそこは沼の入り口だった。INI、バチイケアーティストだと思ったら爆笑陽キャ温もりの塊集団だった件について。


INIが優しくて良い子たちの集団であるとする中でも、池﨑理人の優しさに言及するものがとりわけ多いように感じた。メンバーもファンも、みんな事あるごとに「理人は誰に対しても優しい」と言う。


池﨑理人ミリしらのわたし「池﨑理人ってどんな人?」

彼をよく知っている人たち「誰に対しても優しいんだよ!」


そんなことある? というのが、真っ先に浮かんだ素直な感想だった。

これは別に、池﨑理人の優しさを否定しているわけではない。彼の周囲の人々は、もちろん池﨑理人という人間の様々な側面を知っているはずである。だからこそその人物像を描写するとなれば、ある程度ばらつきが生まれるだろうと思っていたのである。けれど彼を表す言葉の第一声はみな口を揃えて「誰に対しても優しい」。そ、そんなことある? こんな属性過多人間を指して?


これは性格のねじ曲がった人間の見解だが、他者から見た性格を形容・評価する文脈での「優しい」というのは、基本的に、よっぽど他に何も特筆すべき点がないほどに存在感がないというニュアンスを含みがちなものである。そうでなければ、第一に「誰に対しても優しい」と言わずにいられないくらい、信じられないくらいに優しさでできている人間かのどちらかだが、この人の場合は圧倒的に後者でしかないだろう。どう考えたって優しいで無難にまとめるにはこの男はキャラが濃すぎる。

そしてエビデンスとして出てくるわ出てくるわ池﨑理人の優しいエピソード。ただ気づかいができるというよりも、周囲の人々を心から愛しているからこそ生まれるような、愛のこもった優しさを感じるものだ。


顔も名前も声も良くて、変顔から雨ニモマケズのパロディまで多岐に渡るユーモアを持つエンターテイナーで、芸術家な一面も持っていて、メンバーのことが大好きで。


最後に、決定打となったのは以下の発言だ。


「できた!」

「金のタガメの完成です!」

「あこちゃん、金のタガメができたよ!」


はい。

池﨑理人、一生推します。


気がつけばINIの公式YouTubeで投稿されているパフォーマンスや企画動画、ショートを見漁り、ファンクラブにも入っていたし池﨑理人のプラメも登録していたしINIの投稿を観るためにわざわざInstagramとTikTokのアカウントを作っていたし、INIが出演すると聴いて五億年ぶりにテレビの前に張り付いてミュージックステーションをリアタイ視聴した。


こんなにバチイケビジュをしておきながら弟気質なところを可愛がられて下がり眉になりながら目を細めて優しい顔でワハハって笑って、お兄ちゃんのおもろ可愛いところをニコニコしながら紹介して、全員でカメラ前に集合するときにはデカい体を屈めて一番前にくるこの男、さあ……。

新曲パフォーマンスでの“Nah!”とコラボパフォーマンス前のさりげない優しさにときめいたオタクは多いのではないでしょうか。あとばっちりカメラ目線でのクラップ。

INIのパフォーマンス観るのえぐ楽しくて、いつかライブに行きたいなと思ってしまったもんね。そしてそんなINIさんはツアー中でアルバムも発売されるしラジオもあるし音楽番組にもちょこちょこ出てるみたいだわ雑誌の表紙になったり特集されたりするしカレンダーも出すし…………。


生身のアイドルの人生を推すの、めちゃくちゃ忙しいけどめちゃくちゃ楽しい〜〜〜〜〜!!!!!


池﨑理人、アイドルになってくれてありがとう。


池﨑理人をアイドルにしてくれた人たち、ありがとう。


そういえば、池﨑理人という存在に出逢わせてくれた例の雑誌である。

その日は買うまでいかずに本屋を去ったわけだが、INIメンバー全員のそれぞれの性格や関係性を知ったあとに改めて買ってみた。その頃にはもうINIというグループにメロメロ、池﨑理人のこともほかの十人のこともだいぶ大好きになってしまっていた。池﨑理人に関してはそのご尊顔も美声も一億三千年前から知っていたような、実家のような安心感を抱き始めていた。
雑誌を買って初めてちゃんと知ったが、INIメンバーへのインタビューの内容として、リレー形式で「メンバーのかわいいところ」が含まれていたのだった。

池﨑理人さん。


改め、“さびしがり屋の大男”さん。


まあ、あの、たびたび触れられてきている彼の気質ではあるのですが。本人も自覚して言及していた点ではあると思うのですが……。


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(言語化不能の感情の昂り)

𝑩𝑰𝑮 𝑳𝑶𝑽𝑬──

𝑻𝑯𝑨𝑵𝑲 𝒀𝑶𝑼────

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