夜からの手紙 (ショートショート)
原因不明だが世界は1日中昼間と真夜中の地域に分けられた。地軸が狂い食糧と電力不足で人類は減りつつある。
日本は昼間の国だ。ある女性はそれを喜んだ。彼女は上流階級の声楽家で何不自由はない。そんな彼女が好んで歌うのはモーツァルトの「夜の女王」。
ある日、1枚の紙が彼女の部屋に舞い込んだ。「夜の女王をもっと歌え」 とあった。
彼女はファンが入れ込んだと思い、喜んで窓を開けて朗々と歌った。すると周囲が暗くなる。不思議だと思いつつ、彼女は歌い続けた。完全に夜の世界になった。
また1枚の紙が舞い込んだ。手鏡の反射を利用して苦労して読む。
「夜から夜を褒美につかわす」 とあった。
周囲に責められ彼女は病んだ。それでも「夜の女王」ばかり歌った。ある日、また1枚の紙が舞い込んだ。
「聞き飽きた」
その瞬間、昼間の世界に戻ったが、彼女はまだ「夜の女王」だけを歌い続ける。飽きられた曲を歌い続ければもう夜は来ないと思って。少なくとも死ぬまで。
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下記の動画は、夜の女王のアリアです。
日本語訳付きです。
これを作曲したモーツァルトもすごいけど、歌える人もすごい。
ありがとうございます。