しゃべるピアノ
初めて入った骨とう品屋の隅に埃をかぶったピアノがあった。弾くと綺麗な音が出る。老店主は悔しそうに、ぼくが若い男だから音が出ると呟く。どうもピアノを持て余していたらしく、無料で譲るという。返品不可が条件だ。ぼくは喜んで応じた。
ところが引き取ったピアノから毎夜すすり泣く女性の声がする。無料なわけだ。
「さあ、泣かないで。一緒に楽しく暮らそう。顔を見せてくれたまえ」
ピアノの鍵盤から血塗れの美女の首が出た。年上ぽいし、半分透けているが害はない。孤独なので逆に嬉しい。だが、ピアノ女は泣き止むと、今度はしゃべり倒す。それも文句ばっかり。
「ドレミやだアタシもっといい男とソラ一緒がいいシド家がドレ狭すぎるミ」
ぼくはがっかりしたが、そんな性格ゆえ、生首になったのだろう。返品もできず、仕方なしに動画にアップしたら話題になった。女の身元も判明した。例の店主の妻だった。女は店主に殺されていた。
ピアノは好事家に高額転売できた。
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