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男子宝石. (ショートショート)

質屋の某独身店長は閉店間際に初見の老人を入れた。その瞬間眩暈を感じたがすぐに治った。彼の持込品に驚く。

見事なダイヤだ

老人はしゃがれ声で返答する。

こいつはオスだから安くする。身分証不提示で100万くれ

100万は安いが盗品だと困る。それにオス? そもそも宝石に性別はないはず


老人が笑う。

買い取れないなら他所へ行くぞ

店長はすぐに100万を用立てた。

次はメス、つまり女子宝石が見つかれば持参する。それで子ができたら宝石としてまた売れば良い

老人の退店後、店長はいつのまにか世界の宝石が雌雄に分けられることに気づく。店内の宝石同士がそれぞれくっついて繁殖していた。なぜ今まで気づかなかったのか。
男子宝石を指先でつつく。

メスをよこせぇ


あっ宝石が喋った?

メスウ


店長が急いでルビーの指輪をあてがうと、ルビーはぎゃっと叫び粉々に砕けた。

あのルビーはオス?というか区別がわからん

メスウ


俺も女が…

男子宝石と店長は一緒に悶々とした。この世は不条理だ。




ありがとうございます。