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友情の総重量 (ショートショート)

 家庭の事情で転校して心細かった私。孤独な私に、屈託なく話しかけてきたあの子。親友になりました。以来ずっと。というか、あの子は私から離れない…あの子にだって、友達や恋人もいた。でも、結局私のところに戻ってくる。
 でもそんな私にも恋人ができた。するとあの子は恋人に嘘をついて別れさせた。ええ、あの子は私のストーカーでした!

 違います、全然違います。逆です。あの子が私から離れてくれない。友達や恋人を作ってもあの子は…とうとう私が遠方に逃げようとすると一緒に死のうって私を……私を……

 閻魔大王は、二人とも正反対のことをいうので、頭を抱えた。どうも双方が双方で双方ストーカーしていたようだ。大王は「それが二人の友情の形か。犠牲者も皆無だし地獄ではなく静謐な部屋の合わせ鏡になるがよい」 と決めた。大王は忙しく、ゆっくりと罪を吟味しているヒマがない。二人は文句を言う時間もなく鏡になった。永遠に黙ってお互いをみつめあっている。




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ふじたごうらこ
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