株式会社リストラ
株式会社リストラのチラシが入っていた。
……どんな社員や社長でもリストラ可能、思い通りの会社にしよう。料金無料……
電話をすると愛想のよい女性の声がした。
「コレ本当に無料ですか」
「はい」
「じゃ頼む」
ぼくは、むかつく同僚や先輩、上司をリストラした。不思議なことに誰も文句を言わずに退社した。会社は自動的にぼくのものだ。社長室に座るぼくの背後から例の女性の声がした。
「おめでとうございます」
「仕事も手伝ってくれるか」
「いぇわたくしと交替です」
「騙したか。今度はぼく自身をリストラするのか」
突然社内のデスクが消え、リスがうろつき、トラが咆哮する株だらけの森になった。女の姿を見ようにも首がまわらない。身体もない。女の声がコダマする。
「株式会社リストラはァ依頼者もこの世からリスとトラァ」
有頂天になっている人間の魂を食べるのが一番おいしいそうだ。女の説明を聞きながらぼくはリスとトラが追いかけっこしているのを眺める。轟沈。
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