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momonotane
毒舌寿司
死線をさまよった男が蘇生後に、寿司屋に行った。老鬼がいるが店構えは普通だ。
「罪人の舌をくれ」
「帰れ」
「この場所は三途の渡し守から聞いた。閻魔に引っこ抜かれた罪人の舌を食べるとその犯罪にあわないと…」
「おめぇ死にぞこないか」
「私に食べる資格はあるだろ」
老鬼は頷くと男の前に寿司を置いた。罪人の舌がマグロに見える。
「詐欺師の詐欺寿司だ」
「うまい」
「強盗犯の強盗寿司、重婚寿司、恐喝寿司、殺人寿司」
「シメは何?」
「毒舌寿司」
男は満足げだ。
「これで今後犯罪にもあわないし毒舌を吐かれることもない」
「待て、昨日は節分だったな」
「?」
「御免、節分の日は地獄鬼も仕事を休む。賞味期限切れなので今食べたものは無効だ」
老鬼の説明によると一生に一度だけ味わえるものなので、二度と提供できぬという。男は怒った。が、罵声を出そうにも出せぬ。己から毒舌が吐けない。老鬼が慰めた。
「一つだけでも効き目が残って良かった」
男は良くないと泣いた。
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