洞窟の奥はお子様ランチ　（バレエショートショート）

ねえ、藍くん、きみ、お子様ランチは好きかな？

奨励さんに聞かれて藍は警戒しつつ、ええ、とうなずいた。とたん、奨励さんは「いいぞ」　と叫び、藍の手をつかんで、レッスン場のすみにある衣装置き場の部屋に誘導しようとする。

な、なんですか…？

そこは窓がないので薄暗く幕間用の大きなカーテンも吊り下げられていて洞窟のよう。

一番奥まで行くと、色とりどりの小物、ろうそくたちや人形、フリルのある傘などがあるが、なぜかお子様ランチプレートも。奨励さんは誇らしげにそれを取り上げる。

この食品サンプルは樹脂製で新しくぼくが作った。ちゃんとハンバーグもオムライスもスパゲティもあって国旗もつけているぞ。だからこれを使って創作バレエを創ってくれないか。この作品を無駄にしたくない。芸術に昇格してほしいのだ。

だったら奨励さんがそれを持って踊ればいいじゃないですか！　先生に言いつけますよ！

藍は洞窟部屋から一目散に明るいレッスン場へと逃げ出した。

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