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カミングアウトコンビニ (ショートショート)

 受験失敗による引きこもり…でもお腹はすく。いつものように真夜中にコンビニに行った。レジは長蛇の列だ。しかも手ぶらの男性ばかり。美人の女性店員が一人いるが原因はこれか?
 仕方なく商品を持って並ぶ。前の客と店員の会話が聞こえる。

「君にキスをしたい」

「わかりました」

 女性店員はバーコードリーダーを男性の手にあてる。

「300万円でOKです」

 男性はがっかりした顔で姿を消す。

「君の身体を傷つけたい」

「あなたなら3億円でOKです」

 みんな無茶な要求をして当然な金額を言われて黙って帰っていく。次は僕の番だ。震える声で言った。

「実は、元気づけてくれる友だちが欲しい」



 店員は僕の手にバーコードリーダーを当てるなり笑顔になった。

「ぜひ」

「本当」



「こちらからお願いしたいぐらいよ」
 

僕たちは握手をした。あとで聞いたら彼女には人間の価値がわかる特殊能力がある。僕にはとてつもない価値があるそうで励ましてくれた。だから再び勉強を始めた。


ありがとうございます。