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第八話・ローザンヌ国際バレエコンクール並びにバレエ界における人種問題について 


 バレエ界では人種問わず国際的に活躍している人が多いので、ちょっとしたことで炎上しやすいと思う。バレエコンクールには縁がなかったバレエファンの一人として語ってみます。皆が同じ意見とは限りませんのでそのあたりはご注意ください。

 以下は2022年の炎上騒ぎ。ローザンヌ国際バレエコンクール公式のインスタにバレエファンが「選抜されたのは白人メイン。もっと有色人種の人も取り上げてほしい」 と書いた。それに対して公式は「残念なことに、統計的にバレエはあまり(人種的に)バラエティーに富んでいません」 と返しました。確かに統計でいえば、白人メインですよね。しかし納得できない人も多かったようです。


 これに反応したダンサーのブログです。彼女は役柄のために顔を真っ白にしたメイクを「これもレイシスト(人種差別)になるのか」 と問う。別件での話になり、後述しますが、近年くるみ割り人形で人気がある中国の踊り(お茶の踊り)も人種差別につながるとして自主的に削除した団体もあります。これらは解決がない非常に難しい問題です。


 バレエの歴史は古い、そしてもともと白人のものでした。バレエ外でも白人VS黒人の構図は目にみえなくとも存在しています。しかし近年は黒人のバレエダンサーも増えていますし、それを取り扱った映画もあります。下記はアメリカンバレエシアターで黒人初のプリマになったミスティ・コープランドの逸話。彼女は「黒い白鳥」 と言われるのも、差別的だと感じて嫌だったようです。黒人初ということで注目されるのは当たり前なのですが、何をいえば彼女を称賛することになるのかと考えるとそれは難しいことだとわかる。
 彼女はバレエを始めたのは13歳で遅かったものの、1年足らずでくるみ割り人形のクララ役を演じたと言われます。これってすごくないですか。バレエを始めて5年後に、アメリカンバレエシアターにプロダンサーとして入団している。通常のバレエ人生から考えると抜擢がすごいと思う。



 天才の主張は皆が耳を傾ける。黒人初のプリマになったからこそ、その主張は力を持つ。コープランド氏はそれを知りえている。
 彼女の直近の話題。2025年2月12日現在、絵本を創っています。シリーズ2作目らしい。彼女の公式HPでは、後続の黒人バレエダンサーを応援するページ、アワードがあります。黒人初のプリマとして先陣を切り、後続を応援する姿勢は大変頼もしいものです。今まで虐げられてきた黒人像をも打破する存在の一人として幸いあれと願う。

 
 コープランドに限らず、先陣はどの分野でも苦労するようです。下記はベルリン国立バレエ初の黒人バレリーナの告白。コールド(群舞)で皆が白い妖精に扮していて一人だけ黒いのは確かに目立つ。目立たぬために黒い肌を白く化粧しろと命じられたと訴える。これを「人種差別ととるかどうか」 はかなりセンシティブな話になる。バレエでは、コールドの一部だけが目立ってはいけないから。


 白人以外が黒人を演じるシーンでは、白人が逆に黒いメークをする。それも人種差別と指摘するダンサーもいるので、こんがらがる。だってやり玉にあがったバヤデールは別の仏陀のシーンではどのダンサーでも全員金粉をつけて踊る。金はいいが黒だといけないのかとなる。だからこそ正面切って論じるのは難しい。下手したら炎上するからどのバレエ評論家も怖がって踏み込まない。


 これを拡大した解釈になると、世論を慮って、中国の踊り(お茶の踊りともいう)は怖いから上演なしになる。国立ベルリンバレエはじめ国内でもそうしているところもある。この解釈をもっと拡大するとアラブ(コーヒー)、スペイン(チョコレート)、ロシア(トレパック=麦芽糖の飴)、フランス(葦笛)はどうなるのとなる。昔の国に対する振付家のイメージそのままになっている。だから人種問題や肌の問題はすごく難しい。ジャンプやアクロバット的な振り付けの中国に次いで、アラブもやり玉にあげられるのか。アラブは、身体の柔軟さを強調する踊りだがこれもレイシストになるなら、バレエが踊れない。中国もアラブもスペインの踊り、各国の踊りの振り付けはバレエ団によって違うので人種差別ではなく観客として純粋にどれも観たい。削除しないでほしい。

 オペラの方がバレエより露骨で踊りよりあらすじで人種差別をする。名作とされる魔笛は黒人を悪としているし、蝶々夫人は日本人女性を馬鹿にしていると感じる。だけど名作は名作。芸術とレイシストは切ろうとしても切れない。
 答えは永遠に出ないけどこういった問題を吹き飛ばすようなダンサーをバレエ団も観客も皆欲していると思う。みんな安心してバレエを踊りたい、もしくは観たいと思うのは一緒です。肌の色や人種を考慮しながら踊るのは論外でしょう。

バレエの未来に幸あれと心から願います。



(参考資料)

※この記事は2021年のものです。私見ですがローザンヌ国際バレエコンクールが炎上したのはその翌年なのでバレエファンの意識が、プロを見出す権威あるローザンヌ国際コンクールにも向いたともいえると思う。

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ふじたごうらこ
ありがとうございます。