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ひと夏の人間離れ (ショートショート)

夏休みに、お化け屋敷のバイトをした。遊園地だから怖くないのか、小学生ともなると幽霊役の僕を追いかけて、殴ってくる。カップルは、怖がっているふりをして、くっついて離れない。すぐ飽きた。

そこで他のバイトと一緒に客を選んで脅した。生意気な小中学生や、カップルが対象だ。怖がらせすぎて客が逃げまどって足をくじき、捻挫をさせた。それでクビになった。その帰り道、僕は幽霊の扮装のまま交通事故にあって死んだ。

死後の世界でも、お化け屋敷があって閻魔大王から幽霊役を仰せつかった。客は牛頭馬頭。地獄の担当者がなぜお化け屋敷に遊びに来るのかと不思議だったが、まじめに勤めた。すると、今度は天国の天使専用お化け屋敷に異動になった。そこでも幽霊役だった。任期を務めたあと、人間に再度転生できたが、家が幽霊屋敷だった。転生前の記憶がある僕は、白いシーツを頭からかぶり、夜な夜なおぎゃあと叫んで屋敷を徘徊する。ひと夏どころか永遠の幽霊役だが特に不満はない。

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