デジタルバレンタイン (バレエショートショート)
藍の前に井伊野がやってきた。なぜか白いポンチョを着ていて電気仕かけというかデジタル時計のようなカクカクとした動きで小箱を差し出す。
さあ、バレンタインの贈り物を受け取りたまえ
なにこれ
チョコだよ
藍は箱をその場で開け中のミニチョコを井伊野の口に突っ込み毒味をさせた。
なんだよ。信用しろよ。今の俺はアルレキナーダのハレルキン。薔薇の精を心から崇めて…
ここまで聞いて藍はあきれた。
井伊野、あなたはまたうろ覚えの知識でバレエを語って!
バレエでは薔薇の精は男性よ。私は女の子なので間違ってる。ハレルキンはコロンビーヌの恋人よ。ハレルキンは確かに道化師でもあるけどそのポンチョはフェアリードールのとごっちゃにしてるでしょ!
そうだっけ、でもまあ1ヶ月後のお返しを楽しみにしてるよ
断る
藍は井伊野の口に残りのチョコを全部押し込む。
私が本物の薔薇の精なら、愚かなハレルキンをトゲで刺すわ
チョコ以前にまずは日頃の行いを反省しなさいよ
ロマンスのかけらもない2人のやり取りを皆がおかしそうに見守っている。
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たらはかにさまの企画に参加中です。
今週のお題はデジタルバレンタインです。
ガラ公演か発表会ぐらいでしか見かけない踊りはごっちゃにしやすい。
① 薔薇の精
衣装を見たら男性が薔薇の精だとわかりますが初見で気づかないとフリルのドレスを着て眠る少女を薔薇の精と間違えやすい。実話です。
ニジンスキーの当たり役だったのよね。wiki引用します。
下の動画はマラーホフです。7分と少し。
② アルレキナーダ
ちなみに日本ではアルレキナーダとアレルキナーダ両方呼ばれてます。アルレキナーダ呼びが多いようです。アルレキナーダだと力説する人もいますがどうしてもこうなったのか真相はわかりません。よってどちらも正しいことにします。
百万長者のハレルキン(ハレーキンともいいます。フランス語ではアルルカン。道化師のことです)が原題で、貧乏人の娘の彼氏を引き離し、金持ちと結婚してほしい父親がいて…という定番の話。コミカルで楽しい踊りですが演技力も必要で難しくもあります。
下記の動画は日本人カップルによるグランパドドゥです。9分と少し。
③ フェアリードール (人形の精)
本来は人形の精という題名でおもちゃ屋で人形たちが踊りを繰り広げます。舞台ではバレエ小劇場という形でいくつかの短い踊りが続きます。
このうちの14番目のパドトロワ(3人で踊る)アダージョが1番有名です。下記はワガノワロシアアカデミーの生徒さんたちの舞台。
バレコンの演目にもあります。昔はなかった。
去年2023年ではこれを踊った子が1位をとりました。ラストは審査員の言葉が入っています。どこを見て優劣を評価するかお分かりになるかと思います。