バンドを組む残像 (ショートショート)
俺たちは5つ子だ。家でも学校でもずっと一緒で5ピースバンドを作った。ボーカルは当然長男の俺。ギターは性格が几帳面な次郎、ベースは三郎、キーボードはやんちゃな四郎にドラムが短気な五郎。家は狭いので音を出すと怒られる。それで朝早くから登校して練習、昼休みも放課後も練習。プロを目指して新曲を作るたびに音楽会社に動画を送った。でもダメだった。
俺は歯痒くて皆を叱咤激励したがそれが気に食わない4人が結託して俺を外した。代わりにコーラスクラブの女部長をボーカルにした。納得できぬ俺は勝負を挑んだがピンクのカツラを被り過激なメイクと衣装とぶっ飛んだ声量をした女部長の迫力に負けた。俺は彼らを前に泣き崩れた。今までの練習してきた記憶が走馬灯のように目の前を通り過ぎる。
新メンバーでもって応募したらすぐにスカウトされ有名になれた。俺はマネージャーになったが、心の中では満員の観客を前に俺が中心になって歌う残像がいつも脳裏にある。
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