グリム童話ATM (ショートショート)
某作家は原稿が書けず苦しんでいた。気分転換に外出したら迷子になった。箱型の建物が林立して作家専用ATM街とある。作品のアイデアのATMならありがたい。
バラに囲まれたATMに近寄り、ボタンを押す。
鏡よ鏡、世界で一番美しいのは?
(白雪姫か、継子いじめの話でも書くか)
その隣は畳製のATMだ。作家はボタンを押す。
ぼうやぁはよいこだ ねんね しな
(日本昔話ATMか、換骨奪胎話でも書くか)
作家は再度グリム童話ATMに戻る。
おばあちゃんの耳はどうしてそんなに大きいの?
(よし、赤ずきんのセリフでいこう。狼にやられた娘は間一髪で助かるも…ベッドシーンは、いばら姫の濡れ場を参考にしよう)
急にATMから話が出なくなった。ATMから足がにょきっと生え、画面に牙が生えて作家を襲う。以来作家は何も書けなくなった。物語ATM街は作家の頭脳を根底から盗む罠の街…古今東西のストーリーはいつでも満タンにして今日もアイデアに悩む作家を誘う。
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