辻元清美の敗北は「ものの見方の硬直化」のせい。企業経営に生かすには

辻元清美、比例復活も出来ず落選

2021年10月31日に行われた衆院選で、大阪10区の現職、辻元清美が落選し、比例復活もギリギリでならずタダの人になりました。筆者はこの可能性を日本で一番早く指摘し、ツイートが大変バズって嬉しい次第でした。

なぜ辻元清美は勝ち続けてきたのか

筆者は大阪10区に住む維新支持者で、今回の落選というのはハッキリ言ってラスボスを倒したような爽快感があります。ただ、この辻元清美という人物、むちゃくちゃ選挙に強い人物です。

その理由は、長年にわたる地道な活動があります。生コン事件でも分かるように面倒くさい利権調整にも首を突っ込み、地域の企業や団体を回って固定票をコツコツ集め、思想信条を超えた個人票「辻元票」を集め続けてきたため、選挙で他候補の追随を許さなかったのです。この票は大阪10区で5万票あるといわれています。

今回の辻元は普段と違った

ところが今回の選挙では様子が異なりました。選挙前の情勢調査では辻元が優勢。ついで維新新人の池下が続き、自民現職の大隈が3番手という情勢でした。最終結果は池下が勝利したのですが、ここから逆転されるまで、辻元はひたすら失策を積み重ねたという印象があります。

初日から「維新はローカル政党」という禁句

衆議院が解散され辻元は地元の高槻に入り、選挙戦がスタートとなった訳ですが、この時に「維新はローカル政党。意識していない」と発言。有権者の怒りを買いました。

大阪人は「ローカル」「田舎」という言われ方を極端に嫌います。直接的には「維新はローカル」という言い方なのですが、維新は大阪に地盤のある政党であり、これは大阪=ローカルと言ったに等しい発言です。これで反辻元勢力の感情に火が点きました。

選挙序盤は左翼共闘路線

こうして敵失からスタートした(しかし、それを指摘したメディアはほとんどいなかった)選挙戦ですが、序盤は前川喜平や蓮舫などの左翼有名人を応援に呼ぶ、自分の支持者を固めるタイプの選挙活動をしていました。この時点では辻元優勢の情勢が続いており、支持者を確実に固めることが重要である、と考えていたものと思われます。

追い上げられるとなぜか山崎拓を呼び、炎上

中盤戦になると、維新の池下が追い上げているという情勢が伝えられるようになりました。危機感を感じたのか山崎拓を応援に呼びます。これは辻元の常套テクで、選挙で危機感を感じると政界で培った人脈を使って保守系の人物を応援に呼んだり、ネットで対談記事を出して仲のよいことをアピールし始めます。過去の選挙では小林よしのりや山本一郎などの保守人材が応援に加わっています。

関係ないですが、今の小林よしのりは反ワク全振りになってしまって、どうなっちゃったんでしょうね。

話を戻しますと、選挙の応援に呼ばれた山崎拓が「小選挙区は辻元、比例は自民」と発言し、炎上します。ここで大阪10区の維新支持の有権者にはある疑念が生まれます。

「立憲民主党は共産党と野党共闘をしているが、大阪では自民党も野党共闘に参加しているのか?去年の都構想の時の枠組みが生きてるのか?」

また、自民支持の有権者は怒りだします。

「小選挙区は大隈が出ているのに、自民党所属の山崎拓が辻元の応援をするとはどういうことだ?」

無党派層はこの状況に混乱したことでしょう。辻元の情勢はかなり悪化します。山崎拓は他党の候補者を応援した罪で自民党を除名される可能性が出てきています。

最終日は利権政治家アピール

大激戦と伝えられた投票日前日、辻元は駅前で演説を行いましたが、その内容は「与党の法案に8割は賛成してきた」「高槻に高速道路や国道の拡張を持ってきたのは自分だ」「自分は元国交副大臣」という、自分がいかに自民党的な利権政治家で、地元に予算を引っ張ってこれるかという意見でした。

そして落選、タダの人へ

こうして迎えた投票日、さすがに8時当確ではなかったものの、民放は早々に、NHKも日付が変わる前に当確を出し、比例復活待ちへ。そして午前3時過ぎ、立憲民主党の比例3議席の最後の1枠が埋まり、未確定だった2議席もれいわ新選組と国民民主党に配分され、比例落選が確定しました。ここまでが辻元落選までの事実関係です。

なぜこういう失敗をしてしまったのか?

今回の辻元清美の敗北は「ありえない大逆転」です。維新支持者から見ても、当初は池下せめて比例復活して大阪10区から2人の国会議員を出してくれ、という気持ちでした。それがどんどん差が詰まるので、松井一郎や吉村洋文もこれは勝てると踏み、何度も何度も応援演説に駆け付けて支持を伸ばそうという行動に出て、開票してみたら逆転していたという状況です。

なぜこういう逆転を許してしまったのか、そこには立憲民主党やその支持者に特有の「ものの見方の硬直化」があると見ています。

左翼界隈にありがちな「リベラルしぐさ」

大阪で維新支持者をしているとまるで理解できない感覚なのですが、大阪に対する差別的なものの見方というのが特にリベラル界隈を中心にあるらしいです。それを指摘したのがこのツイート

リベラルしぐさ」とでも命名しておきますか、東京&リベラルが文明的で、大阪(地方)&保守が野蛮である、そしてそれを啓蒙していくのが我々の責務だ、みたいな考え方です。

リベラルしぐさが硬直化するとき

ツイート主は怒りだすでしょうが、正直このレベルの差別意識は許容範囲内です。東京モンはドス黒いつゆでうどん食いやがって、味のない海苔をありがたがって、巨人なんか応援しやがって、こういう遅れた脳ミソを啓蒙して猛虎魂を注入していくのが我々「上方」の責務であると常々関西人は言っているわけで。

これがお笑いで済んでいる範囲では問題がないのですが、辻元清美の言動を追っていくと、辻元清美本人、またリベラル界隈は本気でそう思っており、実際の政策にも反映していくべきではないかと考えているのでは?と思われる節があります。

さらに言うと、その考えは組織内で既に浸透しきって硬直化しており、ある種の考え方に沿わないとリベラル界隈では排除されてしまうのではないか?という疑念もあります。その疑念を持つに至った事件がこれです。

立憲民主党の本多というキモいオッサンが、50歳の自分が14歳の子とガチ恋愛してセックスしたら同意があっても犯罪かというキモい発言をして立憲民主党を離党させられ、今回の衆院選にも出られなかったという事件です。

価値観が硬直化している立憲民主党

この発言はキモいオッサンのキモい発言として片付けられましたが実は重要で、恋愛をしてセックスをするというのはこれは国民のかなり基本的な権利で、そこに年齢や性別などで差別をするのはおかしいという指摘です。

一方で、未成年者が性犯罪に遭ったり悪い大人に騙されたりしないためにはどうすればよいかというのがもう片方の議論、ここでは性交同意年齢の引き上げであり、自由と秩序というかなり慎重な議論のいる問題です。

ところが、立憲民主党はこれについて議論をまるでせず、即座にこのキモいオッサンをクビにしてしまいました。この問題に関して、立憲民主党内では価値観が硬直化しており、議論をしてはならないのでしょう。

こういうのがお好きなんでしょう?

話を辻元に戻しますが、硬直化した価値観の中では、ものの見方というのが歪みます。党の副代表である辻元も当然、硬直化した価値観を持っていると考えられます。そのため「東京&リベラルは文明、大阪&保守は野蛮」という思考のもと、自分が有利、つまりそういう価値観が浸透している(はずの)大阪10区で「維新はローカル(イコール野蛮)」という発言が出るのでしょう。

そして、情勢が悪化すると今度は「野蛮人はこういうのがお好きなんでしょう?」という感じで山崎拓を呼んでしまう。山崎拓は九州の政治家で地元以外ではすこぶる評判の悪い議員ですが、大阪も九州も東京の「文明人」からしたら田舎で一緒くたなので区別がつかない。

終盤戦にさらに情勢が悪化すると「野蛮人は利権とかお好きなんでしょう?」とばかりに道路の話を始めてしまう。リベラルしぐさに染まっていない人間からすると馬鹿にしているのと同じですね。政治家が自分たちへの差別を言葉にした。辻元の終盤戦の戦い方はこういう戦い方だったと分析できます。結果、大阪10区では「辻元票」と言われる5万票と共産党との野党共闘で得た1万5000票からほとんど上積みできず、勢いに乗る池下に負けてしまいました。

ものの見方の硬直化は必ず痛い目に遭う

ここから先は政治に限った話ではなく、企業経営とっても有用な話なのですが、ものの見方が硬直化してしまい、世間とズレが生じるようになると、必ず不適応を起こします。

iPhoneが発売された時、ソニーの技術者は「ウォークマンの方が音質が良いので負けることはない」と断言していました。ソニーの技術者のものの見方は「消費者にとって音質は何より重要」だったのですが、実際の消費者はiPhoneで出来るスマホ体験の方が重要と考えていたのです。結果は言うまでもありませんね。

辻元清美も「東京&リベラルの考え方が素晴らしく、大阪人も受け入れた方が幸せ」と考えていたのでしょうが、実際の有権者は地元を愛し、地元を誇りに思い、保守的な、だが利権は嫌う考えを持っていたのです。

政治家は有権者という市場を、企業はユーザーという市場を獲得していくものですから、自分のものの見方が常に正しいと思うのではなく、常に対話を行い、相手が真に望むものを知り、提供していくことが重要です。ものの見方が硬直化してしまっていると、対話が出来なくなり、淘汰されてしまいます。他人の考えを大事にし、新しい視点を取り入れていくようにしましょう。

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