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秋元康と飲みに行ってもお互い「全然楽しくなかったな」で終わると思う


 数年前の話である。

 みなさんは日向坂46というアイドルグループをご存知だろうか。 
 代表番組は「ひらがな推し」 「日向坂で会いましょう」

 この番組でのオードリーと彼女たちの親和性が非常に高く、軽妙な掛け合いや、贔屓があるという告発から始まった関係性の構築など、アイドル番組というよりはバラエティ番組を見るような感覚で彼女たちにハマっていったことを覚えている。

 ちなみに、
好きな芸人
⇒アイドルの番組の司会をする 
⇒そのアイドルのことが好きになる
のような流れを『バナナマンの法則』と呼ぶ。
(その芸人が冠のラジオ番組を持っていればより法則は盤石のものとなる)

 そんな日向坂46がCDデビュー すると聴いたあの日、私は心の中でサトミツのように泣いた。

 そして情報解禁日。
 いよいよ、その楽曲の詳細が知らされた。

 キュンかあ。
 キュン、かあ。

 まあ、でも、 サイレントマジョリティーは売れたしなあ。
 なんて思いながら視聴を始めた。

 とてもキャッチーなメロディ。
 PVの一人ひとりの描写。
 いい感じだ。
 ただなあ。
 私は中尾彬のように顎に手を置いて考え込んでしまった。

 リリックが終わっている。

 アイドルの力を全て失わせるような作詞。
 ベッドで寝転びながら作詞をしたのだろうか。 

キュンキュンキュンキュン どうして
キュンキュンキュンキュン どうして
 

日向坂46/キュン

 どうした。

I just fall in love with you

日向坂46/キュン

 唐突な英語。

キュンキュンキュン 切ない
キュンキュンキュン 切ない

日向坂46/キュン

 どうした、どうした。

You know, I can't stop loving you

日向坂46/キュン

 英語を被せればキュンを帳消しにできると思ったのだろうか。

Sunday なぜなんて
Monday 聞かないで
Tuesday きっと 理解できないだろう

日向坂46/キュン

 三日かけなくてもいい。

Wednesday 毎日
Thursday 見かけて
Friday 思い続けて来たSaturday

日向坂46/キュン

 英語で一週間を表現しなくてもいい。

もっと 会いたい なんて 不思議だ
きっと 僕は声を掛けられない

日向坂46/キュン

 待つだけでは厳しい。

目と目 合うと
胸が締め付けられる

日向坂46/キュン

 恋かあ。

電車の窓 手鏡代わりに
春の制服 そっとチェックして

日向坂46/キュン

腕に巻いてた 真っ黒なヘアゴムで
ポニーテールに 髪を束ねた

日向坂46/キュン

 歌詞の触感が気持ち悪すぎるか。 
 電車で見かけるだけの異性への反応としては。

「可愛い」

日向坂46/キュン

 詰んだ。

 女性アイドルのデビュー曲、男目線の「かわいい」というセリフをアイドルに歌わせるという前時代的な演出。

君のその仕草に 萌えちゃって
あっという間に 虜になった

日向坂46/キュン

 萌えちゃって、が終わってる。 
 本当に 、萌えちゃって、が終わってる。
  

静電気みたいに ほんの一瞬で
ビリビリしたよ

日向坂46/キュン

 ビリビリて。

何もなかったように さりげなく
遠い場所から 見守っていよう

日向坂46/キュン

   見守るなよ。

そんな思いさえ 気づいていない
余計に君を 抱きしめたくなった

日向坂46/キュン

 ただ電車で見かける女子高生に対して抱きしめたくなるなよ。

キュンキュンキュンキュンしちゃった
キュンキュンキュンキュンしちゃった

日向坂46/キュン

 しちゃうなよ。

I just fall in love with you

日向坂46/キュン

 英語。

キュンキュンキュン愛しい 
キュンキュンキュン愛しい

日向坂46/キュン

 ここまでで28キュン。

You know, I can't stop loving you

日向坂46/キュン

 英語。

そうさ あの日から ずっと 気になって
君のことで頭がいっぱい

夜が来ても なかなか眠れないんだよ

 寝よう。

電車の中に紛れ込んで来た
モンシロチョウが肩に留まった時

君は両手でそっと捕まえて
開けた窓から逃がしてあげた

 嘘すぎる。
 ないない過ぎる。

「好きだよ」

日向坂46/キュン

 売れない。
 これは、売れない。

僕にできることは何でもしよう
君のためなら何でもできる
真っ白な心 汚れないように
守ってあげたい

日向坂46/キュン

 ただ電車で乗り合わせた人の心を真っ白と断言する身勝手さと、
 それを汚れないように守ってあげたいと言えちゃう精神性。

僕にできないことも何とかしよう
言ってくれたら力になるのに…
叶わぬ願いの独り言さ
好きというのは反射神経

日向坂46/キュン

 反射神経、ではない。
 好きは、反射神経じゃない。

 

 ここで言わせて欲しいのが、作曲が非常に良いこと。
 
 日向坂46の元気で可愛らしい部分をふんだんに詰め込んだサウンドはデビュー曲として非常に申し分なかった。

 ただ歌詞。
 本当に、歌詞、なのだ。

きっと言ってみたってピンと来ないさ
僕が勝手にキュンとしただけ
こうやって人は恋に落ちるのか
始まる瞬間

日向坂46/キュン

君のその仕草に萌えちゃって
あっという間に虜になった
静電気みたいにほんの一瞬で
ビリビリしたよ

日向坂46/キュン

何もなかったようにさりげなく
遠い場所から見守っていよう
そんな思いさえ気づいていない
余計に君を抱きしめたくなった

日向坂46/キュン

キュンキュンキュン キュンどうして
キュンキュンキュン キュンどうして
I just fall in love with you
キュンキュンキュン切ない キュンキュンキュン切ない
You know, I can't stop loving you 

 日向坂46/キュン

 42キュン。

 
 数年経った今でも思う。
 秋元康と飲みに行ってもお互い「全然楽しくなかったな」で終わるだろうな、と。
 

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