「ロング2は打つべきではない」の検証
「ペイント内でのシュートとスリーを打つべき!ロング2は悪!」
バスケ界隈でよく聞く言葉です。ペイントでのシュートに比べるとロング2(いわゆるミドル)のシュート確率が落ちるのは自明。ただ、じゃあロング2は打たない方がいいのでしょうか???
今夏W杯でパリ五輪の切符を勝ち取った日本代表も戦術としてペイントタッチとスリーを重要視していたしな~どっちなんだろう
と、いうことでBリーグのデータから考察していきたいと思います!
各エリアの得点効率
「ロング2を打つべきか否か」を計る上で最もわかりやすい指標は得点の期待値でしょう。
ということでまずは、シュート区域をペイント内、ロング2、3Pに分けてそれぞれの期待値を見ていきたいと思います。
(ちなみにペイント内は下図の青線で囲われた部分を、ロング2は3Pラインよりも内側かつ青線の外側を指します。)

得点期待値とは
本題に入る前に、そもそも得点期待値とは?というお話です。
得点期待値=シュート%×決まったシュートの点数
で求めることができます。
例えばチームAのペイント内シュート成功率が55%、3P成功率が32%だとすると、
ペイント内の得点期待値=0.55×2=1.1
3Pの得点期待値 =0.32×3=0.96
となります。
各チーム、ロング2の得点期待値は?
各チームのエリア別得点期待値は以下の通り。
(補足:B1リーグ、第8節までのデータを使用)

ロング2の期待値は意外と低くないんだぞ!と言いたかったのですが、間違いなく得点期待値は低いですね…。最も高くて長崎の0.86ということを踏まえると、ロング2が敬遠されていく理由がわかる気がします。
一方でレバンガなんかはロング2と3Pの期待値がそこまで変わらないから、一概にロング2が選択肢として悪いとも言えません。(ただこれに関しては3Pの確率が良くないだけか…とも)
ロング2がもたらす影響
さて「ロング2の得点期待値が高くない」ということを理解したうえで、ここからはロング2の試投、成功率がどのような影響をもたらすかについて見ていきましょう。
相関分析について
ロング2の影響を見るうえで、今回私が選択した指標は相関分析。簡単に説明すると、数々ある要素の中から2つの要素のみに着目して相関関係を求める分析になります。詳しい説明はこちらから。コード無し、エクセルで簡単にできますので皆さんもぜひぜひ。

ではここからロング2がもたらす影響について私なりの解釈を。赤字、青字、太字が注目してほしいポイントです。
①ロング2とオフェンシブレーティング
まず、ロング2の試投割合(ロング2の試投本数÷フィールドゴール試投数)とオフェンシブレーティング(以下、OFFRTG)には負の相関関係が見られます。これは要するに「ロング2を打つほど効率的に点数が取れなくなる」ということ。ロング2の得点期待値が低いのでもはや当たり前ではありますが、ロング2は非効率であると言えます。
次に3つのエリア(ロング2、ペイント、3P)のシュート成功率とOFFRTGの関係性についてです。分析結果から、「ペイント、3Pの成功率はそれぞれOFFRTGと強い正の相関関係にある。一方でロング2の成功率は相関こそあるもののそこまで強くはない」ということができます。ただ、これは試投本数が少ないことも影響しているので、解釈としては、
「各チーム今ぐらいの試投本数ならロング2が入ろうが入らまいが試合には影響しづらいよね。」
ぐらいな感じでしょうか。
この章を簡単にまとめると、
「シュートセレクションとしてロング2は非効率だが、従来の少ない試投本数であればその成否は試合にあまり影響しない」
ということになります。
②ロング2の試投本数とその成功率
前から疑問に思っていたのが「ロング2は効率が悪いから打たない方がいい」って変じゃないですか?ということ。だってそうじゃないですか。
「打たされたロング2と打ちたくて打ったロング2」は違うじゃないですか。
ネイサンブースはいつも気持ちよさそうにロング2を打ってるし。いつか見たアルバルクの試合では中を固めてる相手をカークがロング2でぼこぼこにしてたし。
この章はそういうお話です()
結論から先に言うとペイントや3Pと比べてロング2は確率の高いチームが数多く打っているという解釈ができます。それもそのはず。ロング2なんて好んで全員が打つ必要性ないんですよ。得点期待値も低いし。3Pと違って「おい、そのロング2打ってよーー」なんて思うこと滅多ににないですよね。データはありませんが「そのチームにいる確率のいい選手が多く打った結果」がこれなのかなというイメージです。
③ロング2を打つチームほど3Pは入らない?
これを見たとき、率直に「なんで?」と思いました。きちんとした正解は見出せていないですが、私なりの解釈を書いていきたいと思います。
振り返ると①で「ロング2を打つチームほどOFFRTGが低い」という話をしました。ここから「オフェンス力が高いチームほどロング2は打たないし3Pは入る」ということが言えるのではないでしょうか。オフェンス力がないチームほどペイントを固められ苦しまぎれにロング2を打つシーンを目にします。打たされた、消極的なロング2はチーム状況の苦しさを表すのです。
ロング2を打つべきか否か
結論は・・・
打つべきではない です!!!
やっぱり得点期待値の低いこと。そしてシュート本数の影響がOFFRTGに諸に出ていること。これらを考えると不要論にも納得です。チームとしてロング2を狙いに行くことは得策とは言えないでしょう。
ただ、どうしても打ちたい場合、チーム状況が苦しい場合などは下記を目安にロング2を打ちましょう。
・打つべき(確率が高い)選手が打つ
・その他の選手はショットクロックがない場面に限って打つ
・自分のタイミングじゃなかったらフリーでも我慢
・ネイサンブース