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1.5(イッテンゴ)
2021年1月16日 17:52
<1> 視界の隅をひら、と赤い色が通り過ぎた。 少年が目深に被った笠を押し上げ、それを目で追う。 歳の頃は十六、七だろうか。面差しにはまだ僅かに幼さが残っているが、歳の割には旅装が随分と様になっている。 勾配の急な峠越えの道中だった。考え事をしながら俯いて歩いていた為、周囲の変化に少しも気付いていなかった。 そこは色付いたもみじの大群落で、笠の先を持ち上げ頭上を見上げると、日差しを透か