見出し画像

鬼殺しにだって愛がなきゃ

将棋において、奇襲とされる戦法は古くからある。
とりわけ人口に膾炙しているのが「鬼殺し(おにごろし)」だ。

ルーツは大正時代末期にまで遡り、野田圭甫が考案した「可章馬(かしょうま)戦法」というもののキャッチコピーが「鬼も逃げ出す、鬼も倒せる」だったことに由来するらしい。
庶民にも分かりやすかったことから縁台将棋でも流行したとのこと。

初手で7六歩と角道を開けたところからいきなり7七桂、6五桂と桂馬を高跳びしていくところが鬼殺しの勘所。
勢いそのまま7五歩として7筋を争点にし、角交換には5五角を用意しておき、さらには7筋に飛車を振って突破してしまおうという強引至極な戦法である。

破壊力がえげつないこともあり、早々に対策が練られ、現代ではしっかり受ければ問題ない戦法と言われているが、しかし実戦でやられるとなかなかどうして怯んでしまうというもの。
奇襲と呼ばれるものはいつの時代も侮ってはいけない。

それはさておき、現代社会における奇襲といえば「ハプニングバー」である。
おそらく2010年代初頭くらいから人口に膾炙しはじめた形態のバーで、様々な性的嗜好を持った客が集まり店内で起こる性的なハプニングを楽しむというのが眼目。
SM好きや女装癖、露出症といった性癖を持った者が多いという。
店内にはバースペースと行為スペースがあり、互いの合意が得られればバースペースから密室である行為スペースに移動し、そこで濃厚な時間を過ごすというのが主なしきたり。

そう、互いの合意が必要なのだ。
合意形成がなければ行為は発生しないのだから、単なるバーになり下がってしまう可能性もある。
いくら「ハプニング」と銘打っているからといって、互いの人権をまったく無視してハプニングハプニングしちゃっていいということではない。

ハプニングにも、相手の合意が必要だ。
鬼殺しにだって、相手の指し手が必要なように。

奇襲は一見すると豪快で横柄でおもしろい。
しかし対峙する相手の存在を忘れてしまっては成功しないばかりか、ヘタすればただの犯罪である。

私は鬼殺しもハプニングバーも愛しているが、しかしこれだけは言わせてもらいたい。
テロリズム、反対!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?