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世界を、構築する、構築したものを描写する。⑪ガストン・バシュラール「蝋燭の焔」


焔のそばで、ひとは、遠く、あまりにも遠く夢見ようとする。


ランプに照らされたテーブルの前に座っている瞑想者のまわりに濃縮されたような一つの部屋。

かつてそこで仕事をし、十分に仕事をするエネルギーを持っていた小さな部屋を思い出すことの、なんという慰め、なんという郷愁。

ランプに照らされているテーブルの上に白紙のページの孤独が広がるとき、孤独は一層増大する。白紙のページ!これから渡るべき、いまだかつて渡られたことのないこの広大な砂漠。毎夜白いままに残されるこの白いページは、際限もなくはじめから何度も繰り返される孤独の大いなる表徴ではないか。単に学ぶことだけ、考えることだけでなく、書くことを望んでいる者のものであるとき、その孤独者に取り付くのは一体どんな孤独か。白紙のページはそこでは虚無なのだ。苦渋に満ちた虚無、文章の虚無なのだ。


そう、せめて書くことさえできたなら!
あとは多分考えることもできるだろう。

あなたも静けさを望むか?それなら、悠然と光の仕事を続けている軽快な焔の前で、ゆっくりと呼吸してみるといい。


消える蠟燭は死滅する太陽である。


私は内部だ、焔の軸だ
だから私はもういない 

(ジャン・ド・ボシェール「黒き者の最後の詩篇」)


この「死ね、そして成れ!」を
きみが理解せぬ限り
きみは暗闇の地上の
暗き客人にすぎぬのだ

(ゲーテ「西東詩篇」)


蠟燭によって焼かれる蝶のイマージュ

洋燈のように光る林檎

火のチューリップ

青いルピナスが燃えていた

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