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連載小説【夢幻世界へ】 承前 黄金の階
【承前】
「黄金の階(きざはし)の上、黄金の光の中で、黄金の姿態はひとつの夢を踊った。想像力の限界を超えて踊り、踊りながら、音楽を我が身に引き寄せると、憧れのため息を、それが希望となり責め苦となっていく憧れのため息を、幾千の世界の生きとし生けるものの胸に行き渡らせた。
黄金の情景の縁が薄れ、不規則なぎざぎざの黒に呑み込まれた。黄金は光を失い、淡い金銀のきらめきから銀に衰えると、ついには白に行き着いた。先ほどまで金色に輝いていた踊り手は、今では寂しげな白っぽいピンクの人影となり、ひっそりと疲れきって広々とした白い階の上にたたずんでいる。幾千の世界の喝采がその上に降り注いだ。
その目は虚ろに観衆を見ていた。踊りは彼女までも打ちのめしていた。喝采などなんの意味があろう。踊りこそが目的なのだ。彼女はこれからも、どのようにしてか生きていかねばならない。ふたたび踊るそのときまで」
(コードウエイナー・スミス「夢幻世界へ」より)
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