読書ノート 「うけいれるには」 テッド・チャンクララ・デュポン=モノ 松本百合子訳
何の思いもなく、タイトルだけで読んだ本。内容は、障害者で生まれ、八歳でなくなる子供の、兄と姉、亡くなってから生まれた弟の視点から、庭の置き石が眺め話すというもの。愛情豊かで快活であった兄が障害で生まれた弟と一心同体になり、深く傷つく、弟に批判的で距離をおいていた姉がその後家族の恢復をリードする、後に生まれた弟が、亡くなった兄を想いながら生きる力を周囲に発出していく。最終的には癒やしが来るのだが、それを揃えるのは彼らの周囲にいる家族(両親や祖母)である。読み飛ばしたが、泣けました。
妹が兄に、しゃくりあげながらやっとのことで言う。
「元どおり、に、なる、ためには、あの子は、死な、なきゃ、なら、なかった」
そこで兄は手をおろして妹のおでこに当て、いまでは自分も涙に暮れながらもほほえんで、妹の頭に顎をのせ、やさしくささやいた。
「そんなことないよ、ほら、あの子は死んでもぼくらを結びつけているんだ」
作者のクララは映画監督のゴダールが遠縁にあたるような由緒正しきジャーナリスト。実はこの物語は彼女自身の経験に基づいている。実際に障害によって夭折した弟がいたそうだ。その弟との人生を忘れないために心を込めて書き上げた物語がこれ。魂入ってます。
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