連載小説【夢幻世界へ】 断片10 言葉に価値はない
【断片10】
絶対的リアリティ(道)は「境界」を持たない。言語も永遠性を持たない。しかし、両者の間に対応関係が確立されるや否や、現実の「境界」が生起する。(「莊子」)
〈道〉を求めようとして、人は書物を重んずる。しかし書物は纏められた言葉に過ぎない。言葉を価値あるものとするのは、それが伝える意味である。しかしながら、意味は究極的なものではなく、それは何かより深遠なものに従っている。意味に続いて出てくるその「何か」は表現することができない。
しかしながら、人は言葉だけを重んずる。彼らは世代を超えて書物を伝える。しかしたとえ人が言葉を重んずるとしても、言葉は実際、重んじられる価値はない。まったく価値はない。
実際、価値があるものは、知覚できる形態の中には見いだせない。目に見えるものは、ただ、物理的な形態や色彩に過ぎない。聞くことのできるものは、ただ言葉や音に過ぎない。
ああ、人が形態、色彩、言葉や更に音が、リアリティの実在に到達するのに十分であると思っているのは、なんと悲しいことだろう。
(「莊子」)
混沌の概念あるいはイマージュは、シャーマニズムに起源をもっている。
しかしながら、日常的経験の範囲内でさえも、私たちが混沌を偶然、垣間見ることのできるひとつの小さな場がある。それは夢の世界。
私が「あなたは夢を見ている」とあなたに話しかけていること、それ自体がまさに夢なのだ。
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